フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2017-06
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王の男ブームを追う010●僕がこの映画を2度観た理由

 公開前後の日本キャンペーンにおいて、あまりにも同性愛者を侮辱する失礼な発言が連発していたために、観たくなくなっていた映画『王の男』ですが、前回の記事に対して、みどりさんが書いてくださった以下のコメントに心を動かされ、やっぱり観に行って来ました。

 「日本が植民地統治下に置くまで貴族文化だった韓国で、王朝文化への誇りと一緒に同性愛が取り上げられているという点で、意義深い映画だと思いますよ~」

 ただやはり、あのようなキャンペーンを繰り返した配給会社や監督、出演者に対する感情的なシコリは残っていますから、チケット代を投資することに対しては気が引けていました。かといって、テレビ放映されるまで待つのもなんですし。そこで、ちょうど『市川崑物語』を観に行った時に知った新宿ガーデンシネマの『水曜サービスデー』を利用して1000円で観るという方法を思いつき、なんとか自分を納得させました(←すっげ~小さい反抗ですが。爆)。

 さてさて僕は結局、この映画を観て何を思ったのでしょう。今は、あまりにもたくさん語りたいことがあふれ出していて整理がつかない状態なので、もう少し寝かせてから整理して書こうと思います。ただ一つだけ言えることは・・・僕はこの映画を1回観るだけでは飽き足らず、2回観たということです。なぜなら、1回ではとても把握しきれないほど複雑な世界観が表現されていたし、観るたびに印象が変わるタイプの映画だと感じたからです。韓国で4人に1人が観たという大ヒットの理由がわかった気がしたし、それだけの社会現象を巻き起こすだけの価値のある映画だと思いました。

 この映画については、原作の演劇での同性愛表現や映画化された時点での変更点、公開後の韓国での社会現象や日本でのキャンペーン手法、その後の日本公開での不振ぶりなど、分析して語りたいことが山ほどあります。今後いくつかのトピックに分けて、少しずつ考えて行きたいと思います。結果として、これだけ多くのことに興味を掻き立ててくれる映画を観ることが出来て本当に良かったです。

 作品は作品、キャンペーンはキャンペーン・・・と割り切りたいところですが、映画というのはやはり、宣伝の時点から公開後の社会現象まで含めて一つの「表現」です。看過することは出来ません。時代錯誤なマイナス・キャンペーンのせいで、素晴らしい作品を危うく見逃してしまうところでした。危ない危ない。FC2 同性愛Blog Ranking
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王の男ブームを追う009●僕がこの映画を見ない理由

 誤解されると困るので、まずはじめに言っておきますが・・・僕はなにも、この映画を「同性愛映画ですっ!」と宣言してくれと望んでいるわけではありません。ただ、否定するのはおかしいと思っているだけです。

 特に僕がおかしいと思っているのは「同性愛と言われるのは自分にとって負担」とか、 「この作品は同性愛よりも、人間関係におけるもっと大きい愛を描いています。」と、わざわざ監督や出演者が公の場で言ってしまっている態度についてです。

 だったら『王の男』という思わせぶりなタイトルを最初から付けないでもらいたい。これがもし『王の女』というタイトルだったら何を思いますか?・・・王が好きな女について描いた映画なんだろうなぁというイメージを、多くの人が持つのではないでしょうか。つまり、『王の男』というタイトルで、多くの人が「王が好きな男について描かれた映画なんだろうなぁ」とイメージすることを誘導して話題を集めておきながら、そのイメージをわざわざ打ち消そうとする心理の裏には何があるのですかと問いたいわけです。

 もう一つ。「それより奥は、見てはならない」というキャッチコピーが公式サイトやポスター・チラシで使われていますが、いわゆる「同性愛=禁断」の香りを匂わせて関心を引き、観客動員を図ろうとする「同性愛映画にありがちな宣伝手法」だと僕には思えます。『王の男』というタイトルとセットで見ると、そのイメージ戦略は明らかです。こういうあざとい宣伝手法を使っておきながら、一方ではそのイメージを払拭しようとする態度って不思議。

 「男が男に感情的に惹かれること」って、単純に「同性愛」でしょ?。たとえ相手がゲイであるという確証がなかったとしても。相手が同性であり自分が「好きだな」と感じていればそれは「同性愛」。ゲイやレズビアン、バイセクシュアルやトランスジェンダーの同性愛者が日常よく感じている感情です。

 この映画では、王様が旅芸人の男の子を好きになるんでしょ?。たとえ男の子が中性的なキャラクターで、彼に「母親の幻影」を重ねて見ていたのだとしても、男の子だと知った上で好きになり、宮廷に住まわせたりするんだったら立派な「同性愛という感情」じゃないですか。しかも原作ではキスをする場面もあるそうですし。

 だったら「歴史映画」「韓国映画」「恋愛映画」「娯楽映画」「人間愛映画」(笑)と言い表すのと同じレベルで「同性愛映画」と言うことの、何がおかしいというのでしょうか?

 これを「おかしい」と感じたり、そのイメージを払拭しようと躍起になる人は、これまで「同性愛」という言葉に塗り込められてきた様々な汚れた(=汚された)イメージを自分の中に抱えてしまっている人。あるいは同性愛という言葉から、すぐに「セックス」とか「性行為」とか「いやらしさ」というイメージを結び付けて連想してしまう短絡思考の持ち主。すなわち「ホモフォビア(同性愛嫌悪)」を抱えている人なんではないでしょうか。

 僕は「同性愛に関する表現がある」ということで、この映画に興味を持ったんですけど、違うと言うんなら興味がないので観ませんね。少なくとも僕にとっては「マイナス・キャンペーン」が続いたし、どうでもよくなってきちゃったんだも~ん♪FC2 同性愛Blog Ranking

王の男ブームを追う008●「同性愛映画ではない」とするPR戦略考

 掲載再開します。

 掲載を見合わせていた以下の2件の記事について、「非公開コメント」を引用していた部分を削除した上で掲載を再開させていただきます。

10/7にアップした記事
王の男ブームを追う005●イ・ジュンギさん、日本での記者会見で「同性愛と言われるのは自分にとって負担」と発言

10/8にアップした記事
王の男ブームを追う006●韓国男性の「公共の敵」

 「非公開コメントの常連さん」から再度「非公開コメント」がありました。結局メールアドレスは教えていただけなかったのですが、数々の問題提起を僕に投げかけてくださったことには感謝します。ありがとうございました。また、今後は出来ましたら「公開の上で」語れる言葉を使って、意見を表明してくださると助かります。言葉の選び方によって充分にそれは可能なのではないかと思いますし、より有意義な議論や情報共有が、他の方々とも出来やすくなるのではないかと思います。(「非公開」でしか語れないことは、引き続き「非公開」でも構いませんが。)

 この映画の公開によって、もし主演俳優さんが「韓国男性の公共の敵」として扱われる現象が発生し、しかもネット上にそうした言説が溢れることが実際にあったのだとしたら、それは積極的に語って問題提起するのが、このブログのスタンスだと思っています。現時点では調査不足なので深く語ることは控えますが、もう少し僕なりに調査した上で書いて行こうと思います。

 正直、最近はこの映画への関心がすっかり冷めていた僕ですが(笑)、再び火を点けてくださってありがとうございます。現在の僕の最大の関心事としては、わざわざ『王の男』という邦題を付け、互いに精神的に惹かれあう男と男の姿を描いておきながら、あえてこの映画を「同性愛映画ではない」とPRする監督や俳優のPR戦略の謎について、その背景にあるものを探って行きたいと思っています。いわゆる僕らにとっての「ノンケ言説」分析ですね(笑)。

 僕はまだこの映画を観ていません。観た人たちやメディアによって語られる言葉でしか、この映画のことを判断できません。きっと実際に観た上で語りたくなることも今後たくさん出てくると思います。



「同性愛描写映画のPRについて」 関連記事
ブロークバック・マウンテンで見る世界019●悲しみを描き出したその先に・・・
ブロークバック・マウンテンで見る世界024●ゲイ・イメージ考
ゲイ映画「ぼくを葬る」公開中

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王の男ブームを追う007●韓国男性の「公共の敵」2

おしらせ

10/7にアップした記事
→王の男ブームを追う005●イ・ジュンギさん、日本での記者会見で「同性愛と言われるのは自分にとって負担」と発言

10/8にアップした記事
→王の男ブームを追う006●韓国男性の「公共の敵」

 以上2件の記事について、「非公開コメント」の形で情報を寄せてくださった方がいらっしゃいます。その真偽も含めて現在の僕には判断しかねる内容が含まれていたため、不本意ながらとりあえず、記事をいったん非公開とさせていただいております。

★今回の一件の発端となったWebサイト
韓国歴史的ヒットの「王の男」は「同性愛映画ではない」(eiga.com)



 コメントを寄せてくださったあなた。

 以前から僕が「王の男」について記事を書くたびに「非公開コメント」で貴重な情報を寄せてくださるあなたに対して、僕はとても興味があります。

 この「王の男ブームを追う」というシリーズを僕が作ったのは、映画『王の男』が同性愛を描写したことにより韓国国内でどのような反応や反響、それにまつわる出来事が起こったのかを知りたいからです。あなたが寄せてくださった情報は、このシリーズの興味の「核」の部分でもあります。それは「同性愛」という事象を現代韓国社会がどのように捉えているのか、あるいは捉え返そうとしているのかを映し出す大事な情報だと思えるからです。

 もし差し支えなければ、この記事のコメント欄に非公開であなたのメールアドレスを教えてください。もう少し、この映画に関して言葉を交わさせてください。その上で、上記2つの記事をやはり非公開にするべきなのかどうか、あるいは表現を改訂するべきなのかどうかの判断をしようと思います。

akaboshi
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王の男ブームを追う006●韓国男性の「公共の敵」

 前回の記事で僕は、「王の男」役者陣の日本でのPR会見を報じるWebサイトを元に、ちょっと批判めいたものを書きました。「同性愛」について、なんだか侮辱されたような印象を持ったからです。

 それに対して韓国の方から非公開コメントで御意見をいただきました。そのコメントには、イ・ジュンギさんが「王の男」を演じた後どのような騒動に巻き込まれたのか。韓国の国内で報じられた(あるいは噂された)様々な出来事が書かれていました。

 驚きました。この背景を知っているのといないのとでは、イ・ジュンギさんの発言に対する印象が、ガラッと変わります。そこで、本来は「非公開」として僕個人に宛てられたコメントではありますが、あえて一部分を公開させていただきます。これは皆で共有するべき情報だと思うからです。意見をお寄せくださった方、匿名性は守られた形での公開ですので、どうかご了承ください。
 また、この映画に「同性を好きになる」感情が描かれているのだとしたら、僕にとってそれは立派な「同性愛映画」なのだと感じます。そして同時に「歴史映画」「権力映画」「芸術映画」なのだとも思います。映画は一つの言葉では決して語りきれない豊かな表現であることはわかっています。

 しかし、ことさらに「同性愛映画ではない」と、あえて発言するその心性が理解出来ない気持ちに変わりはありません。もし「同性愛を描いているだけの映画ではない。」と言うのなら納得できるのですが。「同性を好きになる感情=同性愛」を描いているのに、そのことをあえて否定するかのような印象をもたらす発言をすることの不思議には、こだわり続けようと思います。

●以下、非公開で寄せられたコメントです。

★「非公開」であったことを尊重し、掲載はやはりやめさせていただきます。
もう少し事実関係を僕なりに調べた後で、後日、説明させていただきます。
(改訂:10月8日21:10)

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王の男ブームを追う005●イ・ジュンギさん、日本での記者会見で「同性愛と言われるのは自分にとって負担」と発言

 日本公開が12月に決定となり、今年の正月映画の目玉として注目を集めそうな韓国映画「王の男(King And The Clown)」ですが、一足先に東京国際映画祭で10/21に上映があります。僕は翌日、関西レインボーパレードに参加するため今回は行かれないのですが、前売券がすでに発売されているようなので観に行かれる方はお早めに。
第19回東京国際映画祭Web「王の男」
●10/21   21:30 - 23:52(開場21:10)
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen7
ゲスト:イ・ジュンイク、イ・ジュンギ
●10/21   19:10 - 23:32(開場18:50)
渋谷Bunkamura シアターコクーン
ゲスト:イ・ジュンイク、イ・ジュンギ
「王の男」公式サイト

 なお、さる9月末には主演のカム・ウソン、イ・ジュンギ、チョン・ジニョンの3人が来日してPR記者会見を行ったのですが・・・こういう見出しで報道されると、ゲイとしては一気に気持ちが冷めてしまいます(笑)。
韓国歴史的ヒットの「王の男」は「同性愛映画ではない」(eiga.com 9月26日)

 特に気になるのは、下記の部分です。

 また、その一方でイ・ジョンギは、ヨンサングンとコンギルの関係を「同性愛と言われるのは自分にとって負担」と複雑な心境を告白。「ヨンサングンとコンギルはともに孤独な境遇で、コンギルにとってはむしろ母性のようなもの」。そんな本作が大ヒットしたことによって「いろいろ騒がれて心に傷を負ったところもあるが、俳優として多くを学び、この映画に出られて本当に光栄」と語っていた。

 韓国の国内で大ヒットしてブームを呼び起こした際に、イ・ジョンギさんには「心に傷を負」うくらいの重圧があったのでしょうか。きっとあったのでしょう。心無い言葉や視線を浴びせかけられる経験をしてしまったのでしょう。

 「同性愛と言われるのは自分にとって負担」と発言したくなる気持ちもわかりますが、人が人に対して「愛」の感情を抱くこと、それがたまたま同性であるということを「同性愛」と表現することの、なにがいけないというのでしょう。
 そこで「負担」と感じる心理的な背景には、なにがあるのか。「愛」=「異性愛」と思うことが一般常識とされていることについて疑ってみる発想を、彼は一度も持たなかったのでしょうか・・・何ヶ月も役を演じ、同性に愛情を抱く役の人物として生きた経験を持ちながら。

 多くの人たちの心無い言葉で傷ついたのかもしれませんが、記者会見でこんな発言をしてしまうのは、ちょっとどうかと思います。正直、僕はこの記事を目にして、ものすごく腹立たしかったし、映画を観に行くのはもちろん、この映画について考えることも一時的に嫌になりました。今は少し冷めましたが、それでも、なんとなく気持ちにわだかまりは残っています。おそらく今後観に行くとしても、相当「ムカつきながら」の映画鑑賞になることでしょう(笑)。

 なにも僕は「ブロークバック・マウンテン」のヒース・レジャーのようにLGBTカルチャー雑誌に登場して同性愛者にあたたかいメッセージを送ってくれとは言いません(笑)。
「yes」創刊の波紋011●ヒースの名言

 ただ、同じ「俳優」という職業で表現者として表に立っているはずなのに、この落差はいったいなんなんだろうと思うだけです。
 アメリカとアジアの同性愛に関する「人権意識」の差も背景にあるのでしょうが、こんな形で「同性愛」という言葉を傷つけられると、はっきりいってムカつきます(笑)。書店でイ・ジュンギさんが表紙になっている雑誌を見かけるだけでも・・・最近ではムカついてます(笑)。そして、ヒース・レジャーはやっぱりすごい表現者だったんだなぁと再確認し、「ブロークバック・マウンテン」を見返したくなるのです。

関連記事
アン・リー「ブロークバック・マウンテン」●MOVIEレビュー
「ブロークバック・マウンテンで見る世界」最新記事はこちら

DVD「ブロークバック・マウンテン」

アニー・プルー著「ブロークバック・マウンテン」

オリジナル・サウンドトラック「BROKEBACK MOUNTAIN」

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王の男ブームを追う004●同性愛を描きながら「異端視」されない理由

当初、「同性愛」に言及しなかった(らしい)
韓国メディア


 かたや「ブロークバック・マウンテン」は「同性愛描写」が問題視され、中国やUAEなどのように上映禁止を決める国もあればアメリカ国内でも上映中止運動が起き、アカデミー作品賞を逃した理由に挙げられたりしているのに、なぜ韓国で「王の男」は国民的な爆発的ヒットを記録しているのでしょう。

 このことに関して、昨日の記事を見てくださった方から、とても興味深いサイトを紹介していただきました。
 韓国のゲイ小説家ハン・ジュンヨルさんの「王の男」に関するレビューです。
 これは2006年1月に韓国の「戦う新聞」として有名な「ハンギョレ21」に掲載されたものを日本語訳したものです。韓国のゲイとして「王の男」ブームへの戸惑いが率直に綴られており、映画の内容を推測する上でも面白い文章です。ぜひ読んでみてください。
ハンギョレ21 594号「過度に美しいゲイロマンス」

<彼のレビューを要約します。
映画「王の男」のネタばれ的な要素も含みますので、ご注意ください。↓>


 映画「王の男」は韓国映画の興行成績を塗り替え、多くのメディアがその要因を分析しているにも関わらず「同性愛」に言及するメディアがほとんどないのは異常だ。なぜ「王の男」は、従来の同性愛描写映画に貼られがちだった「Queer(風変わりな)映画」というレッテルを、観客や批評家から貼られずに済んでいるのか。

①「過度に美しいため」ではないか。
・・・主人公コンギルの「しとやか」な描写など、映画の中の男たちの愛が美しく見えるように描かれている。

②「少しでもホモフォビアたちの神経に触る性的表現をすべて排除したから」ではないか。
・・・恋人たちは「熱い視線だけ」を交換する。セックス描写を避けたのは利口な演出だ。ホモフォビアは「同性愛」というとすぐに「肛門性交」を連想して身震いするから。

③男たちの愛を「互いに対する終わりのない配慮と犠牲」として描いているからではないか。
・・・ホモフォビアたちが彼らの愛を「汚い」と悪口を言う根拠が一つもない。
  ↓
 過度に美しい同性愛という理由で, どちらかといえばこの映画は大多数の観客からは同性愛映画とは見なされないようだ。 彼らが知っている同性愛とは、このように美しくはありえないのだ。 あたかも、この映画を同性愛映画だとされた瞬間, 映画の価値が一瞬にして下落でもするかの様に。

 同性愛から同性を離れて愛だけを描写したこの映画は、誰かの話のように一編のよく作られた‘ボーイロマンス’なのかもしれない。
  ↓
 エロチックなセックス描写がなく、慇懃な目くばせだけでもあらゆる事を表現できるゲイロマンスも存在するのだ。同性愛者も、異性愛者と同じように映画を通して夢を見る権利がある。このような「美しい愛」を夢みるQueerたちのためのロマンス映画がたくさん登場することを願う。

 「同性愛コード」の歴史

 ハン・ジュンヨルさんは「王の男」の大ヒットと国民映画的な地位の獲得は、「同性愛コード」を戦略的に「隠した」からだと捉えているようです。これは、今までの同性愛映画史から言っても珍しいことではありません。

 ドキュメンタリー映画「セルロイド・クローゼット」でも詳しく描かれたように、ハリウッドにも数多くいるLGBTの表現者・芸術家たちは、ホモフォビアたちから「変態映画」のレッテルを貼られて上映禁止になることを恐れ、さまざまな工夫を凝らして同性愛表現を隠し、巧妙に映画の中に忍ばせて来ました。
 時には設定を改変させられたり、企画そのものが中止になることもあったようです。
 なぜならハリウッドにおいては60年代まで「同性愛」をスクリーンに映し出すことが自主規制機関のチェックにより禁止されていたからです。
 1969年にアカデミー作品賞を受賞した
「真夜中のカーボーイ」 が同性愛映画というレッテルを「公式には」貼られずに「名作」としての地位を確立したのも、製作者たちによって巧妙な工夫が施されたからだと思います。
(→「真夜中のカーボーイ」を最近見直し、そのことを確信しました。この映画に隠された「同性愛コード」分析を近々、掲載します。)

 現在の韓国は「男性のみが徴兵される」兵役制度が依然敷かれており、「男が男らしくあること」を国として奨励している社会です。
(→ 「ウォンビン兵役報道に思う」参照)
 そのような社会では男同士が愛し合うことは「非生産的」なことだと見做され、軽蔑や嘲りの対象になりがちです。
 しかし「王の男」は、近代以前ではありますが旅芸人と宮廷の王が「愛しあう」姿を歴史劇として堂々と描き出しています。それにも関わらず「同性愛コード」はさほど問題にされず、大統領までもが「この映画を見た」ことを大々的に喧伝し、ブームに便乗しているのです。

 最後は「女」のもとへ戻る王

 製作者たちがどこまで意識的に行なったのかはわかりませんが、「王の男」が結果的に大ヒットして「国民映画」の地位を確立した秘訣はやはり、「同性愛コード」が忌避感を持たれない程度に、万人に受け入れられやすく「美しさ」で薄められたからでしょう。

 また、コンギルという「美しい男」に惹かれた王は、物語の最後には結局「女」の元へと戻るという筋書きも、少なからず影響しているのかもしれません。いや、かなり影響しているのでしょう。

 しかし、やはりこの映画がヒットしたのは、現在の韓国社会の人々の意識下で予測もつかない「何か」が動き始めていることを意味しているように感じられます。実際に「同性愛コードの分析」などもメディアによって始められているようです。今後ますますそうした機会は増えることでしょう。

 男性同士の性行為場面を、物語上の必然として堂々と描いた同性愛映画「ブロークバック・マウンテン」や、ゲイと女性が性行為に挑む場面を含んだ日本映画「メゾン・ド・ヒミコ」も公開されていることですし、なにかと物議を醸し続けることでしょう。韓国のLGBTたちにとって今年は、更なる「社会の中での可視化」に繋げるための絶好の機会なのかも。FC2 同性愛Blog Ranking

王の男ブームを追う003●「低予算+時代劇+同性愛」

 日本では来春公開

 従来、韓国映画大ヒット作のパターンだった「高予算+トップスター+愛国心+家族愛」という常識を覆し「低予算+時代劇+同性愛」で最多動員記録を樹立した「王の男」。
→FLIX Movie Site3/12「韓国の歴代観客動員数を塗り替えたゲイ映画って?」

 この現象は、日本のニュースサイトでも続々と取り上げられ始めています。そして日本での公開は、角川ヘラルド映画と韓国の配給会社が初の試みとして「共同で」配給することが決定したそうです。
→朝日新聞3/5「韓国の異色映画「王の男」謎のヒット 観客1200万人」


 「同性愛コード」の広がりに貢献

 この映画のヒットを通じて、実際に「同性愛」という言葉が韓国社会の中で表立って語られることにも繋がっているようです。
 さる3月5日には韓国文化放送(MBC)『時事マガジン 2580』が、同性愛コードについて深層分析する番組を放送したりもしたそうですし、そのことを日本でもLGBTメディアではなく「ライブドア・ニュース」が報じていることも興味深い事実です。
→Livedoor NEWS 3/2「同性愛者が見る映画『王の男』は?」

 韓国では今、「メゾン・ド・ヒミコ」「ブロークバック・マウンテン」といった同性愛を扱った映画の上映時期が重なっています。各作品とも評価は高いようで、韓国ポータルサイト「NAVER」の「現在上映作品のネチズン評価」には、ベストテンの中に3作品ともランクインしています。
●3/26現在「王の男」1位、「メゾン・ド・ヒミコ」4位、「ブロークバック・マウンテン」7位。
NAVER(Yahoo!翻訳付き)

 韓国映画人の「複雑」

 同性愛者の役を演じた主演のイ・ジュンギさんは、すでに「国民的スター」として扱われているらしく、韓国で今、問題になっている「スクリーン・クォーター制度」についての盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領とのインターネット対話などに出席。ある意味では、政府の政策を若者たちにPRするのに「利用されてしまっている」面もあるようです。
→中央日報3/23「盧大統領、『王の男』のイ・ジュンギとスクリーンクオータ討論」
→Innolife 3/23「盧武鉉大統領「イ・ジュンギは実物も美男子」

 Innolifeの記事によると盧武鉉大統領はイ・ジュンギに対して「映画でだけ美男子だと思ったが、実際に見たら実物も美男子だ。『王の男』は、今もお客さんが入っているのか。私が直接映画を観たが、後でビデオで出ればまた観たいと思っている」と語ったとあります。

 こういう時に人気者が引っ張り出されることでマスコミが大挙押しかけて取材し、結局は政府広報の役割を担わされるのは何処の国も同じようですね。
 イ・ジュンギ氏は映画人を代表して大統領と討論したみたいですが、「王の男」の大ヒットは、スクリーンクォーター制度を縮小させたい韓国政府にとって「韓国映画は実力を持っている」ことを証明する口実を与えてしまったという面もあるため、彼が招待されて議論しても説得力は薄くなってしまうのではないでしょうか。そもそも彼が人選された時点で、そうした政府の思惑が透けて見えます。韓国の映画人たちは、この「メディアイベント」を複雑な思いで見守ったことでしょう。

 ハリウッド大作映画の大量上陸に脅える映画人の思いをよそに、「王の男」の海外進出は国を挙げて奨励されるのでしょう。日本以外にも様々な国で上映されることになりそうです。
→朝鮮日報3/19『王の男』 イ・ジュニク監督、米の有力各紙とインタビュー

 どのような映画なのか、実際にまだ見ることが叶わないのでなんとも言えませんが、少なくとも「同性愛コード」を広める一助にはなるということで、今後もこの映画の動向には注目し続けようと思います。
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王の男ブームを追う002●韓国最多動員記録を達成

 韓国で昨年末に公開され、同性愛が描かれていることで話題の映画「王の男」が、本日ついに韓国での最多観客動員数を記録したようです。先ほど中央日報が報道しました。(→『王の男』韓国映画史を書き直す...観客数最多へ)
 これまでの最多だった『ブラザーフッド』の記録(1174万6000人)を越える1180万人がこの映画をすでに観た上、いまだ219箇所の映画館で上映中。客足も順調に推移しており、まだまだ記録が伸びることになりそうです。

 ちなみに韓国の総人口は約4700万人であり、国民の4人に1人(25%)が見たという計算になります。日本の最高動員記録は宮崎アニメ「千と千尋の神隠し」の2340万人ですから、総人口の18%に過ぎません。「王の男」の大ヒットぶりは驚異的です。

 また、注目される日本公開ですが、朝鮮日報では「CJエンタテインメントを通じて韓国映画史上初めて直接配給形式で日本公開を進めている」予定であると報道しています。
(→『王の男』が『ブラザーフッド』超え達成へ)
 つまり日本の配給会社の手を借りず、韓国の配給会社自らが、日本映画市場に進出してくるというわけです。現在の韓国映画界全体の好調ぶりを象徴している出来事ですね。また、韓国で大ヒットする映画にしては珍しく民族主義的色彩の薄い映画だそうですから国際マーケットでも十分通用することでしょう。こうした形で「同性愛」や「トランスジェンダー」が可視化されることは大歓迎です。
 この映画の場合、公開当初は出足が鈍かったものの、口コミ効果でどんどん動員が伸びているということですから、内容的にも期待できますし・・・早く見てみたいですね~。

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王の男ブームを追う001●韓国でゲイ映画「王の男」大ヒット中

昨年の12月29日に韓国で封切られた映画「王の男」が、空前の大ヒットを記録しているそうです。 (→「朝鮮日報」2/11参照)
先日、ついに動員1000万人を突破し依然観客動員は絶好調。これまでの動員1位の「ブラザーフット」(1174万人)や2位の「シルミド」(1108万人)を抜き、韓国映画での歴代1位になるかどうか注目が集まっています。

実はこの映画、「同性愛」を描いたものだというから動向を見逃せません。

物語は、朝鮮王朝時代の王と宮廷芸人の姿を描いたもの。王と芸人が同性同士で愛し合うことも描かれているようです。
さらに、これまで韓国で大ヒットする映画にありがちだった「民族主義的感情に訴える方式」がほとんど存在しないにも関わらず、これだけの動員を記録しているはじめての映画としても話題を呼んでいるようです。
(→「朝鮮日報」2/10のシム・ヨンソプ氏(映画評論家)のレビュー参照)


制作費も、「シルミド」の82億ウォンや「ブラザーフッド」の147億ウォンと比べて半分にも満たない40億ウォン。これほどの大ヒットになるとは関係者も予想していなかったらしく、公開後の口コミ効果がもたらした「本当の意味でのヒット作」と言えるでしょう。

「クロスセクシュアル・シンドローム 」

この映画で、王に愛される美しい男性“コンギル”の役を演じた新人俳優イ・ジュンギ氏は一躍スターとなり人気沸騰。その影響なのか、韓国男性の間では整形手術が大ブームという記事も掲載されています。
(→「朝鮮日報」2/10参照。)

さらに彼は在学中のソウル中央芸術大学から1年間の奨学金が支給されることが決定したとのこと。評価にあたって大学側が発表したコメントが驚きです。
(→「朝鮮日報」2/7参照。)


「現在、“クロスセクシュアル(Cross Sexual)シンドローム”の中心となっているイ・ジュンギに大衆が熱狂して夢見ているのは、全てイ・ジュンギの役に対する飽くなき探求と演技へ情熱の結果だ。」

・・・クロスセクシュアルという言葉を僕ははじめて知りましたが、なかなかいい言葉だと思います。こうした形で映画が社会現象を巻き起こすことは、韓国社会に「同性愛」への認識が広まる契機になることでしょう。最近、毎日のようにこの大ブームに関する話題が配信されているようですし、今後の動向には注目したいと思います。

男女差別問題に新たな視点

実際にこの映画の大ヒットは、韓国社会における「男女差別問題」に新たな視点をもたらす役割も果たし始めているようです。同じ朝鮮日報のサイトで注目すべき記事を見つけました。
→「韓国男性を差別する法律の中身とは?」より引用

映画『王の男』に出てくる美男が王と持ってしまった性関係を自分の願う性関係ではなかったとした場合、その王を「強姦罪」で告訴できるだろうか。 答は「ノー」だ。相手が「王」だったからではなく、被害者が「男」だからだ。現行の刑法は強姦罪の被害者を「婦女」としか規定していないのだ。

これは韓国女性開発院が11日に発表した「現行法令上の男女差別条項発掘調査結果」を紹介する記事なのですが、これまでの男女差別問題は「女性保護」の観点からのアプローチだったことを見直し、「男性は強姦罪の被害者になれない」など、男性にとって不利な状態で法律が施行されていることを問題視しています。

さらに注目すべき記述がありました。なんと軍隊内部での男性同士の性暴行問題にも触れているのです。

実際、2003年に性暴行の苦痛に耐えられなくなり自殺したキム某一兵事件など、軍隊や刑務所内の男性被害者は増える傾向にある。昨年、国家人権委員会は軍隊内の性暴行被害者が全体の15.4%に上ると報告している。

このブログでも以前、 「ウォンビン兵役報道に思う」「山本薩夫「真空地帯」●MOVIEレビュー」で言及してきましたが、旧日本軍でも自衛隊でもどこの軍隊でも、男だらけの軍隊生活においては男性同士の「いじめ」や「性暴力」は当然、起こり得る問題でしょう。記事にあるとおり、実際に韓国国内の性暴行被害者の15.4%が「軍隊において同性から被害を受けている」という事実は、問題視されるべき重大事だと思います。

軍隊というのは上官の命令には絶対服従の「ヒエラルキー」が最も重視される組織です。
人間は、異性だけではなく同性のことも好きになる可能性のある生き物だし、肉体関係も持てるということを知っている僕としては、閉鎖された集団生活で実際に何が行われているのか、表立って語ることは被害者にとっても「恥」だとみなされやすい分、とても気懸かりです。
この映画の空前の大ヒットによる「同性愛」への関心の高まりは、こうした現在の社会制度がはらむ問題点や矛盾点への関心につながる可能性も秘めていると思います。日本公開はまだ予定されていないようですが、ぜひ早いうちに実現してほしいと思います。

兵役非理問題のチャン・ヒョクが演じるはずだった美男子役

ただ一つ気がかりな情報が。王に愛される“コンギル”の役には、実は別の俳優チャン・ヒョクのキャスティングが決まっていたそうです。しかし彼は2004年9月に兵役非理の疑いでソン・スンホン、ハン・ジェソクらとともに社会的バッシングを受け、現在は軍に入隊中。そのせいで長い間、この映画の制作は延期されていたそうです。退役後、彼はどんな気持ちでこの「国民的大ブーム」と、新人スター、イ・ジュンギの活躍を見つめることになるのでしょうか。
(→「韓流エンタメ店長ちゃま」1/26
& 「BUNKA KOREA2004.10/2参照)

可能性のある若者が、貴重な2年以上の期間を、強制的に国家に「身も心も捧げ」させられる。その上で成り立つ「男優位」社会。否応なしに区別される「男」と「女」。そんな現実を、LGBTたちはどのようにして過ごしているのでしょう。そろそろ「時代劇」ではなく現在の問題として、そうしたことを描く映画が出てくるべきだとも思います。

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