岸恵子リスペクト007●「名優」とは、子どものように無防備な自分を、さらけ出せる人を言う

9日(火)に日本テレビ「火曜ドラマゴールド」で放送された『大女優殺人事件』。数々出演していた役者さんたちの中で圧倒的に存在感があり、「生き様」を堂々と曝してカメラの前に立っていたのは岸恵子さんと浅丘ルリ子さん、この二人だと思いました。彼女らのどちらかが画面に映っているだけで画面に緊張感が生まれ、なんとも言えない「華」があるために目が離せなくなり、期待せずに見た僕の思いは良い意味で裏切られ最後まで楽しみながら見ることができました。いったい、彼女達の持っている吸引力は、なんなのでしょうか。
それはきっと彼女らが、「安定しきっていない存在のあり方」を楽しんでいるからなんだと思います。小賢しい「演技の技術」を身につけた凡庸な役者たちが繰り出す優等生的な演技ほど、見ていて退屈で眠くなるものはありません。器用な台詞回しと器用な表情を作り、「映像演技のお手本」のようなマニュアルどおりの立ち回りを見せられても、スリルがないんです。
よく、「子どもと動物には敵わない」という喩えがありますが、それは本当だと思います。子どもと動物は「次に何をするのか」予測がつかないから見ていて面白いし目が離せない。児童劇団で大人に飼いならされて死んだ目をしている子役たちを別にして、子どもというのは基本的に「打算」とか「計算」を身に付ける必要がない存在ですから、自分の内面に忠実に、天真爛漫に振る舞うことが出来ますよね。

「単純なもの=一面的なもの」って、ちょっと見ればすぐに理解できてしまいますよね。しかし彼女たちの演技は単純さとは対極にある「複雑性」を常に帯び、周囲の単純な演技者たちに埋没しない「強さ」があるから、面白くて見続けることが出来るんです。
「無防備な自分」をさらけだすこと。それは自分に自信がなければ出来ることではありません。そういった意味で、岸惠子さんと浅丘ルリ子さんは本当に、自分をさらけ出すことを厭わない自信に満ち溢れていますし、「自分の人生」に対して強固な自信を持っているのだと思います。
「自信」を間違った方向に積み重ねて自己が肥大化し、他人におせっかいな説教をしたりして、年を重ねるほどに「傲慢」になって行く人は世の中にゴロゴロと転がっていますが、本当に自信のある人はわざわざ他人を配下に置こうとしなくても、自然と尊敬される存在になるものです。
岸恵子さんと浅丘ルリ子さんが今回のドラマで曝してくれた「演技者として、人間としての生き様」を、僕は心から尊敬します。彼女達のように、年を重ねるということを「素敵なことだ」と感じさせてくれる素敵な大人がたくさんいれば、若者はけっして自殺になど走らず、未来に希望を抱いて生きて行けることでしょう。→FC2 同性愛Blog Ranking
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岸恵子リスペクト006●えっ・・・「岸マープル」ふたたび!?

だって・・・前回のドラマがあまりにもつまらなくて2時間も見ているのが本当に苦痛だったんですもん(←懲りずに本音丸出しでスミマセン)。唯一ワクワクしたのは木の実ナナさんとの会話シーンの5分ほど「のみ」。あとは単調でテンポが悪く出演者の演技も紋切り型で「ルーティン・演技」とでも呼びたくなるような熱の入らなさぶり。2時間もの間チャンネルを変えずに見ていたのは、ただ「岸さんが見たいから」。テレビの2時間ドラマの粗製乱造ぶりとシステム化された味気ない作品作りは、視聴者に「ストレス」を撒き散らしますし出演者たちのブランド・イメージも傷つけますよ本当に。
さて今回は豪華な出演者なのですが、内容的に前回の二の舞にならないことを祈ります。岸惠子、浅丘ルリ子、水前寺清子、はしのえみ、永井大、松坂慶子、桜井淳子、井上順、草刈正雄、谷隼人、西川峰子。これだけのメンバーを揃えてつまらなかったら・・・今はパソコンでテレビを見る時代ですから、ハードディスク録画で岸さんの出演場面だけをピックアップして飛ばし見しちゃおうと思います~(スポンサー企業の方、ごめんなさい)。
火曜ドラマゴールド/アガサ・クリスティー原作「大女優殺人事件」は1月9日(火)21:30から、日本テレビ系列で放送です。岸さんファンの皆様、岸さんのお姿だけでもチェックしましょう。 →FC2 同性愛Blog Ranking
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岸恵子リスペクト005●「知るを楽しむ」水曜夜連続放送中

僕は今朝の第一回再放送を録画したので、これから見ようと思います。感想はまた後日。
このシリーズはテキストとしても発売されていて、岸さんと辰巳芳子さんが一冊にまとめられているのですが、岸さんの部分だけでも88ページもあり、写真や書き下ろしの文章も掲載されていて、とても充実した内容です。彼女のこれまで生きて来た道のりや、人生観について知ることが出来る入門書だと言えるでしょう。僕はこちらも・・・これから読みます(笑)。
最近の岸さんの活発な活動振りは、ファンとして幸せです。→FC2 同性愛Blog Ranking
●人生の歩き方 2006年4-5月 (2006)「岸惠子 孤独という道づれ」
岸恵子リスペクト004●「岸マープル」は可愛かったけど・・・

昨日放送された岸恵子さん主演ドラマ「嘘をつく死体」ですが、ある意味ものすごいドラマでした。なにが凄いって、ミステリー・ドラマのはずなのにちっとも「謎」に関する好奇心を掻き立てられないばかりか、いちいち子ども騙しのような無神経で安っぽい「視聴者をおどかす」ための空疎な演出が随所に施され、見ていて物語の展開など「ど~でもよくなる」空しさに覆われてしまったからです。どうせなら「ミステリー」というものを茶化した「コメディー」としてもっとカリカチュアしてしまったら笑って見ていられたのかもしれませんが、そこまで踏み込む勇気はなかったようです。
笑うには中途半端。ドキドキもしない。それでも2時間なんとか見続けたのは僕が「岸恵子ファン」だから。ファンは、岸さんが次にどんな格好でどんな髪型でどんな表情を見せてくれるのか、それだけでも十分に見ていられるものですが、そうでない人にとっては「なにを見ていいのかわからない」困ったドラマになっていたのではないかと思われました。
岸さんの「我の強さ」を再確認
それにしても、演技を見ているだけでも十分に、岸さんというのは「我が強い」人なのだということがわかります。その特性が生きる役柄の場合には彼女の魅力は引き立つのですが、今回のようなドラマでは空回りしてしまったようです。
どんな台詞を言うときにも岸さんは「周囲のリズム」に合わせるというよりは自分の身体感覚に忠実に存在し続け、結果的に相手役から浮いてしまいます。常に存在の仕方が「岸恵子の時代気分」でホスト役を務めていた時と同じような「私が岸恵子ですっ!」と、背筋を伸ばして凛とした気品を保ったままでいるのです。しかしこの役は、脚本で書かれている台詞の言葉でもわかるように「現代の若者しゃべり」のような、構えず気取らず「ぶっちゃけた」調子でしゃべることが要求される役。台詞の言葉と岸さんの身体感覚も、明らかに「ずれている」のが伝わってきました。その「ズレ」が成功しておかしみを生んでいる場面もあれば、逆に浮いてしまっている場面もあり・・・こうしたことはリハーサルを積み重ね、共演者同士で呼吸が掴めるようになることで解決するものなのでしょうが、その時間もなく強行軍で撮影が進められたことが画面から滲み出ていました。
一晩寝て翌日にこのドラマを思い起こすと印象に残っているのは「岸さんが岸さんとして、あの役を演じていた」という強烈なインパクトのみ。ドラマと言うよりも「岸恵子を見た」という事実しか頭に残っていないのです。やはりスターとして一世を風靡するタイプの人間には、その人に独特の存在感とか、強烈な「花」があるものです。結果的に、彼女の「人としてのアクの強さ」を再確認させられるドラマとなりました。
ステレオタイプはつまらない
なぜ岸さんの印象ばかりが残ったのか。その理由はきっと、彼女が決して演技に「ステレオタイプ」を持ち込まず、あくまでも「自分の身体感覚」にこだわって演技をし続けたからだと思います。時に不器用でゴツゴツしていて、明らかに周りからは浮きがちではあったけれども。
共演者たちのほとんどは、その点では演技が素直で単純でした。画面に出てきた瞬間から「裏表のない善人」あるいは「悪人」あるいは「いわくあり気な人」だということがわかってしまう。いかにもこれまでのサスペンスドラマに繰り返し出てきたであろうパターン通りの典型的なキャラクターを「なぞっている」ように感じられてしまうのです。それは「コメディー」としてカリカチュアした世界観の中では有効な演技の方法ではありますが、今回のようにリアリズムのスタイルを貫こうとした時には「中身のない人」に見えてしまいます。
人物が内面に抱える複雑さというものは、そう簡単に「表情」や「仕草」として表現されるものではありません。むしろフツーの人間なら多かれ少なかれ、自分の本心が他人に容易には悟られないように「隠して(演じて)」生きているものだと思います。安っぽいドラマに出てくる人たちのように、常にわかりやすく大げさな表情で感情表現をする人たちなど、現実世界にはあまり存在しません。
「これはサスペンスドラマだから」という割り切りで、従来のサスペンスドラマのイメージをただなぞるだけのものほど、つまらないものはありません。「火曜サスペンス劇場」がテレビにおける使命を終えて終了した背景には、こうした「従来のサスペンスドラマをなぞるだけのサスペンスドラマ」では、メディアが複雑化して好みが多様化した現代のテレビ視聴者が満足しなくなったという面があるはずです。テレビドラマ界の根本的な発想転換を望みます。現代の視聴者はもう、子供だましで騙されるほど単純ではありません。
今回のドラマで唯一面白かったのは、冒頭の岸さんと木の実ナナさんのコミカルな会話のシーンだけ。あとはほとんど、ドラマとしては成立せずに停滞してしまっていました。どうか岸さんには、もっと丁寧に時間をかけて生み出される「創作の場」で、素敵な演技を見せ続けて欲しいと思います。「テレビ的演技に合わせられない不器用さ」というのは、実は非常に人間的であり大切なことなのですから。→FC2 同性愛Blog Ranking
岸恵子リスペクト003●今夜9:00から「岸マープル」登場

我がリスペクトする岸惠子さん主演ドラマが、2時間にわたって放送されます!今までの数々の悪行は、これで許しましょう。(笑) →公式サイト
タイトルは「嘘をつく死体」。アガサ・クリスティーの推理小説「パディントン発4時50分」の設定を日本に置き換えてのドラマ化。脚本はジェームス三木。演出は猪俣隆一氏です。
猪俣隆一さんをネットで検索してみたら、過去には このようなドラマを演出してきています。
おっ! 「サイコメトラーEIJI2」といえば工藤静香出演作。たしかあのドラマ、映像の作り方が非常にスピーディーで格好よかったし、映画のような印象の連続ドラマでした。こうした改編期のスペシャルドラマには一流の演出家を起用してテレビ局も勝負に出ますから、映像作品としても期待できますね。
ところで「DRAMA COMPLEX」といえば恒例の長~いサブ・タイトルですが、さすがに今回は上品にまとめられているようです。
「輝く女シリーズ②“アガサ・クリスティ嘘をつく死体”ミス・マープル初登場、深夜特急車窓殺人事件、華麗な死体トリックは愛の罠~スーパー家政婦潜入捜査で名推理」
そりゃ~岸さんが主演なんですから「高級感」「品」そして「可愛さ」をセールスポイントにしてくれなきゃ困ります(笑)。最近では、故・久世光彦さん演出の向田邦子終戦ドラマ
今日は朝から楽しみでわくわくしていました。放送は21:00からですが野球が延びると21:30~になるので、ご覧になる方はお気をつけください。→FC2 同性愛Blog Ranking
岸惠子リスペクト002●「時代気分」に熱中した頃
チャーミングな毒舌に魅せられる。
可愛い顔してすごいことを言う。しかも体験に裏打ちされた説得力を持つ言葉。
かつてTVKテレビで放送されていた「岸惠子の時代気分」。僕が岸さんのことを知ったのは、ささやかで良心的な対談番組だった。
TVKテレビといえば横浜に本社があるローカルのUHF局。
その頃のTVKテレビといえば昼間は、まるでラジオのようなノリの主婦向け番組をやっていたり、夜は横浜ベイスターズのナイター中継などが編成の中心であり、神奈川県民といえどもコアなファン以外は、あまりチャンネルを合わせることはなかったのではないかと思う。(今はどうだか知りません。)
コマーシャルも神奈川ローカルの「静止画像」が多く、そのチープさが笑いのネタにもなっていた。(今はだいぶ変わったようです。笑)。
番組との出会いは高校生の時だった。なにげなくテレビをザッピングしていたらTVKテレビから突然、優雅なジャズの音色が聴こえて来るではないか。その「TVKらしからぬ」雰囲気が珍しく、ザッピングの手を止めた。
画面には「提供・横浜高島屋」の文字。そして上品な飾り付けが施されたスタジオで、背筋をピンと伸ばした女性が挨拶している。目がとても大きく口元の笑顔がとても印象的な、その人の凛とした「佇まい」がまず僕の目を引いた。
「あ、クリープの宣伝の人だ。」
その頃の僕は岸さんといえばクリープのCMでしか見た事がなかったので、まずはそう思ったように記憶している。
(注:正確には、クリープではなく「マリーム」です。笑)
「こんばんは。岸惠子です。今夜の時代気分のお客様は・・・○○さんです。」
何気なく始まった対談を聴いていると、これがけっこう面白い。特に岸さんの発言が面白い。品のあるキャラクターのわりに、舌鋒が鋭いのだ。しかも色んなことを知っていて、自分の意見をしっかり持っている人だということが伝わってくる。しかも彼女が言うと嫌味にならず、チャーミングなのだ。これは稀有なキャラクターだ。
司会者がいちばん面白い対談番組
まずは、そんな彼女に興味を持ち、番組を毎週見るようになった。
普通、対談番組の司会者は、あまり自分のことを語らないものである。しかし岸さんの場合はそんなパターンなどお構いなしに自分の意見をはっきり言う。しかもそれがいちばん面白い(笑)。次第に彼女の経歴も知って行く。彼女が番組内で、自分からよく語るからだ(笑)。
日本映画を代表する女優だったのに若くしてフランス人と結婚し、パリへ渡ったことから味わった様々な異文化体験。その後、様々な人との出会いからジャーナリスティックな活動に興味を持ち、持ち前の好奇心で世界中の危険地帯に果敢に乗り込んで行った武勇伝のものすごさ。
その体験談や失敗談をはじめ、「どちらの文化にも完全には属していない」と感じる彼女ならではのユーモア、そして痛烈な日本批判・・・それが本当におもしろい。
僕はいつの間にかこの番組を見る時にはぺンとノートを用意して、岸さんの面白い発言を書き留めずにはいられない高校生になっていた。
最近、久しぶりにそのノートを引っ張り出してみたら・・・ちょっと「オタク」が入ってるんじゃないかと思うくらいの書き込み方に、自分で失笑を禁じ得なかった。「時代気分」だけではなく、その頃見聞したテレビ番組や映画、演劇、本などについて何でも記録し、しかもやたらめったら感動し、興奮を書き連ねている独り言の羅列・・・。これを「若さのエネルギー」と言うんだなぁと、しみじみとしてしまったほどだ。
そんな「超・吸収期」だった僕に間違いなく数々の知的刺激を注入してくれたこの番組は、金曜夜10時と月曜午前11時の再放送の計2回放送されていた。
しかし当時は高校生。部活やテスト勉強など多忙を極めていたため、つい見逃すことも何度かあり、その時はものすごいショックで落ち込んだものだった。番組でのプレゼント予告には必ず応募し、2回も本が当選した。葉書には番組へのアツイ思いを書き連ねたので、きっとその思いが伝わったんだろうと勝手に解釈している(笑)。
対談のゲストは「TVKテレビにこんな人がっ!」と驚くような豪華メンバーがよく登場した。
作家・政治家・映画監督・俳優・女優・ジャーナリスト・企業経営者・・・・。話が盛り上がった時には2週に渡って放送されたり、岸さんがフランスに渡った時にはパリで収録されることもあった。月に一度は「総集編」と題して3~4人分のダイジェストが放送されていたので、レギュラー放送を見逃した時の悔しさを少しは埋めてくれる機会にもなっていた(笑)。番組の最後には娘のデルフィーヌ・シャンピさんの写真と詩の朗読もあり、なかなか風刺の効いたセンスのいいコーナーで、こちらも楽しみだった。
その後、僕は東京で一人暮らしを始めたのだが住環境が悪くテレビのない生活で番組を見ることが出来なくなった。そしていつの間にか番組は終わり、岸さんの活動は女優業の比率を高めて行った。
失ってみてはじめて、その大切さを実感する。
僕にとっての「時代気分」は今にして思えば、精神的な母親のような存在だったと言っても言いすぎではない。
次回からは数回にわたり、高校~大学時代のノートを参考にして岸さんの発言の数々を振り返ってみます。
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かつてTVKテレビで放送されていた「岸惠子の時代気分」。僕が岸さんのことを知ったのは、ささやかで良心的な対談番組だった。
TVKテレビといえば横浜に本社があるローカルのUHF局。
その頃のTVKテレビといえば昼間は、まるでラジオのようなノリの主婦向け番組をやっていたり、夜は横浜ベイスターズのナイター中継などが編成の中心であり、神奈川県民といえどもコアなファン以外は、あまりチャンネルを合わせることはなかったのではないかと思う。(今はどうだか知りません。)
コマーシャルも神奈川ローカルの「静止画像」が多く、そのチープさが笑いのネタにもなっていた。(今はだいぶ変わったようです。笑)。
番組との出会いは高校生の時だった。なにげなくテレビをザッピングしていたらTVKテレビから突然、優雅なジャズの音色が聴こえて来るではないか。その「TVKらしからぬ」雰囲気が珍しく、ザッピングの手を止めた。

「あ、クリープの宣伝の人だ。」
その頃の僕は岸さんといえばクリープのCMでしか見た事がなかったので、まずはそう思ったように記憶している。
(注:正確には、クリープではなく「マリーム」です。笑)
「こんばんは。岸惠子です。今夜の時代気分のお客様は・・・○○さんです。」
何気なく始まった対談を聴いていると、これがけっこう面白い。特に岸さんの発言が面白い。品のあるキャラクターのわりに、舌鋒が鋭いのだ。しかも色んなことを知っていて、自分の意見をしっかり持っている人だということが伝わってくる。しかも彼女が言うと嫌味にならず、チャーミングなのだ。これは稀有なキャラクターだ。
司会者がいちばん面白い対談番組
まずは、そんな彼女に興味を持ち、番組を毎週見るようになった。
普通、対談番組の司会者は、あまり自分のことを語らないものである。しかし岸さんの場合はそんなパターンなどお構いなしに自分の意見をはっきり言う。しかもそれがいちばん面白い(笑)。次第に彼女の経歴も知って行く。彼女が番組内で、自分からよく語るからだ(笑)。
日本映画を代表する女優だったのに若くしてフランス人と結婚し、パリへ渡ったことから味わった様々な異文化体験。その後、様々な人との出会いからジャーナリスティックな活動に興味を持ち、持ち前の好奇心で世界中の危険地帯に果敢に乗り込んで行った武勇伝のものすごさ。
その体験談や失敗談をはじめ、「どちらの文化にも完全には属していない」と感じる彼女ならではのユーモア、そして痛烈な日本批判・・・それが本当におもしろい。

最近、久しぶりにそのノートを引っ張り出してみたら・・・ちょっと「オタク」が入ってるんじゃないかと思うくらいの書き込み方に、自分で失笑を禁じ得なかった。「時代気分」だけではなく、その頃見聞したテレビ番組や映画、演劇、本などについて何でも記録し、しかもやたらめったら感動し、興奮を書き連ねている独り言の羅列・・・。これを「若さのエネルギー」と言うんだなぁと、しみじみとしてしまったほどだ。
そんな「超・吸収期」だった僕に間違いなく数々の知的刺激を注入してくれたこの番組は、金曜夜10時と月曜午前11時の再放送の計2回放送されていた。
しかし当時は高校生。部活やテスト勉強など多忙を極めていたため、つい見逃すことも何度かあり、その時はものすごいショックで落ち込んだものだった。番組でのプレゼント予告には必ず応募し、2回も本が当選した。葉書には番組へのアツイ思いを書き連ねたので、きっとその思いが伝わったんだろうと勝手に解釈している(笑)。
対談のゲストは「TVKテレビにこんな人がっ!」と驚くような豪華メンバーがよく登場した。
作家・政治家・映画監督・俳優・女優・ジャーナリスト・企業経営者・・・・。話が盛り上がった時には2週に渡って放送されたり、岸さんがフランスに渡った時にはパリで収録されることもあった。月に一度は「総集編」と題して3~4人分のダイジェストが放送されていたので、レギュラー放送を見逃した時の悔しさを少しは埋めてくれる機会にもなっていた(笑)。番組の最後には娘のデルフィーヌ・シャンピさんの写真と詩の朗読もあり、なかなか風刺の効いたセンスのいいコーナーで、こちらも楽しみだった。

失ってみてはじめて、その大切さを実感する。
僕にとっての「時代気分」は今にして思えば、精神的な母親のような存在だったと言っても言いすぎではない。
次回からは数回にわたり、高校~大学時代のノートを参考にして岸さんの発言の数々を振り返ってみます。
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岸惠子リスペクト001●本物の「華」

1月3日にテレビ朝日で放送された「岸惠子のとっておきフランスの旅」というその番組は、長年の岸恵子ファンである僕にとっては夢のような番組だった。現在彼女が日本での住処にしている古い日本家屋が映し出され、書斎で原稿を執筆する姿が紹介される。さらにはぎっしりと書物が詰まった書棚の前でインタビューに答える姿も・・・。近年、女優としての活動に重点を置いている彼女の、久しぶりに披露される日常の姿だ。
やはり彼女は美しい。年齢に関係なく「華」がある。しかもそんじょそこらの華ではない。持って生まれた美貌に加え、波乱に満ちた人生経験の中で培われた持ち前の好奇心を存分に発揮しながら、常に我が道を歩いてきた人ならではの凛とした華がある。もうすぐ70歳になろうとしているだなんて信じられない若々しさと無邪気さを兼ね備えたその人格は、あいかわらずとても魅力的である。

はじめてのフォト・エッセイ集「私のパリ 私のフランス」
『私のパリ 私のフランス』の「あとがき」によれば、本来は彼女の構成・演出でジャーナルな内容のものが企画されていたらしいのだが、スポンサーや広告代理店の許可は下りてもテレビ局が「視聴率的に大いに疑問」だとして企画が流れそうになったという。出版社や百貨店との提携企画としても進んでいるため中止という訳にはいかず、彼女が本当にやりたかった企画は次の機会に延期し、今回は純粋に「お正月の旅番組」として割り切って、楽しめる内容のものとして制作されたという。その過程ではずいぶん闘いがあったらしい。
このエピソードは嬉しかった。彼女が相変わらず彼女でありつづけているからだ。作家としての芯のある彼女は健全だったのだ。そして、今のテレビに良質な企画・本当に放送されるべき内容が通りにくくなっているという厳しい現実も感じさせられた。彼女のような人にこそ「もう年だから」と大人しくならずに、今回本当にやりたかった企画をぜひ実現させて欲しいと思う。

最近は日本での女優業に本腰を入れているようだが、彼女ならではの作家活動にもぜひぜひ、精力的に取り組み続けてほしい。

僕は、岸恵子さんに精神的に育てられたといってもいいほど、彼女の発言や振る舞いから数々の感動や影響を受けて来た。そのきっかけとなったのは、かつてTVKテレビで放送されていた対談番組「岸恵子の時代気分」である。またの機会に書こうと思う。→FC2 同性愛Blog Ranking