工藤静香「大切なあなたへ」●アルバム「月影」レビュー最終回
空の彼方から
この星を選び 生まれて来たあなた
夢は溢れ出す位 集めてみて
大切な何かが輝やき始める
その瞳
映す事は全て 間違いじゃない
例え悲しい事も 逃げないで
その一つ一つを 強く受け止め進む
あなたが映す未来へ

「大切なあなたへ」
words:愛絵理
music,arrangement:
村山晋一郎
●REVIEW●
入魂の一曲。
身近な家族への思いがストレートに込められた直球勝負の歌詞からは、すべてを包み込む母性愛が感じられる。
成長して苦悩にぶつかる年齢に達した時、かつて幼かった自分に対して母親がこういう言葉を与えてくれていたことを知ったら、どんなに勇気をもらえるだろう。
彼女の現在が凝縮された自作詞。
シンプルだけれども広がりを感じさせるアレンジ。
そして、情緒に走らず言葉をきちんと届けるボーカル。
「声」には、その人の生き方が如実に反映される。
彼女の歌声には、人間らしい揺らぎと芯の強さが同居していて生々しく、
常にその時々の精神状態が刻印されてきた。
安定しきらない。常に変化し続ける。
それは歌手・工藤静香の特徴であり、生き方である。
この曲は、35歳の彼女が歌手として辿りついた、一つの到達点だ。

「月影」
●PONY CANYONサイトで試聴できます。
●「Fe-MAIL」にアルバムインタビューあり。
・・・連載『工藤静香 SHE SEA SEE』Vol.1・.2・.3・.4
●Real Guideに動画インタビューあり。
●音楽大好き!T2U音楽研究所に特集ページあり。
●「月影」レビューを終えてみて●→FC2 同性愛Blog Ranking
この連載を始めたのは6月6日・・・4ヶ月経ってやっと書き終わりました(笑)。
スタイルも掲載間隔も気まぐれで自由な形で進めて来ましたが、この連載をきっかけに多くのファンの人と言葉を交わし、出会うことが出来ました。
ネット上には彼女の誹謗・中傷が飛び交っています。しかし「歌手」としての彼女の歩みを、自分の人生の歩みと重ねてきた者もいるということを、僕はこの連載で表現したかったようです。
彼女が今までに発表してきた膨大な量の歌は、僕の血となり肉となり、いつも心を支えてくれています。きっと僕が死ぬまで、そうあり続けるんだと思います。
今後は「工藤静香名曲レビュー」として、アルバム曲・シングル曲・発表時期にこだわらず気ままに続けて行こうと思います。また神出鬼没ですが・・・今後もよろしくおねがいします。
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工藤静香「深海魚」●アルバム「月影」レビュー10
捨てたのは正直な自分でしたか
飢えてても
いい娘のふりをしながら笑いもしたし
乱暴な唇は無口な声に慣れた
だけどほんとうは血の色までは変われない
覚えておいて
卑(いや)しいくらい
まだあなたを愛せるのよ

words:松井五郎
music,arrangement:Jin Nakamura
●REVIEW●
思いを遂げるために
自分の「声」を売り渡した人魚姫。
王子に思いが告げられない。
そもそも出自も境遇も違うのだ。
もがいても思いは届かず
無惨にも、王子は遠い誰かの物に・・・。
愛されたい。その気持ちが嵩じると
人は思いも寄らぬ「熱病」に罹る。
愛されるためだったら
自分のすべてを投げ打って
ボロボロになるまで
あがいてしまうこともある。
それが届かず叶わなかった時。
狂気にさいなまれた心は凶器と化す。
恋心の放つそうした毒を見事に表現した
これぞ「松井五郎の世界」。
そのドロドロ感が久々に味わえる曲である。
●工藤静香さんと松井五郎氏について●
1993年のシングル「あなたしかいないでしょ」以来、12年ぶりに松井五郎氏を作詞に起用。その事実は、長年のファンにとっては、かなりの「サプライズ」だった。
1987年のデビュー以来、後藤次利氏の作曲とプロデュースで数々のヒット曲を飛ばした彼女。1994年の「Blue Rose」からはセルフ・プロデュースを開始し路線を大きく変更。以降の大多数の曲は彼女本人(愛絵理)が作詞を担当することになった。そのため松井氏の起用はデビューからの6年間のみに限定されていた。もうこの組み合わせはあり得ないのかと思っていたところに、今回のアルバム「月影」で久々の起用。名コンビ復活となったのである。
僕は愛絵理の絵画的な詞世界が大好きである。表現者として自作詞にこだわる姿勢も素晴らしいと思う。セルフ・プロデュース初期の彼女からは「自分の言葉で歌いたい」というエネルギーがギラギラと伝わってきて、そのパワーには圧倒されたものだった。
しかし1996年から徐々に、他人の世界を再び取り入れ始めることになる。
「激情」や「雪・月・花」では中島みゆき氏を作詞に起用。
「Blue Velvet」「カーマスートラの伝説」では、はたけ氏のプロデュース。
「きらら」「in the sky」「一瞬」では河村隆一氏の作詞とプロデュース。
「深紅の花」ではYOSHIKI氏のプロデュース。
こうした90年代後半の流れは、セルフ・プロデュース作品とめまぐるしく混ざり合い、次から次へと新境地を開拓する姿が新鮮であり、ドキドキさせられた。彼女自身も「他人の色に染まって遊んでみる」ことを楽しんでいるかのようであり、純粋にボーカリストとしての彼女の能力を再認識させてもくれた。
「アイドル視」されがちなデビュー以来からの「他人にプロデュースされる状態」から脱却し、
セルフ・プロデュースにこだわる時代を経て、やっと獲得した歌手としての自由な活動姿勢。
その時々の欲求に従い、やりたいことをやってみて、自分の足でもがいてみた上で辿りついた新しい地平。それが彼女の現在だ。
この曲で久々に組んだ松井五郎氏は、おそろしいまでに女性心理への深い洞察力を感じさせる、これまた稀有な作詞家である。ドロドロとした毒気もはらんだその詞世界は、工藤静香の持ち味と相性がとてもいい。
このコンビでかつて生み出されたシングル曲を数えてみた。





1988年
●抱いてくれたらいいのに (作詞:松井五郎/作曲・編曲:後藤次利)
1989年
●恋一夜 (作詞:松井五郎/作曲・編曲:後藤次利)
1990年
●くちびるから媚薬 (作詞:松井五郎/作曲:後藤次利/編曲:Draw 4)
1991年
●ぼやぼやできない (作詞:松井五郎/作曲・編曲:後藤次利)
●メタモルフォーゼ (作詞:松井五郎/作曲・編曲:後藤次利)
1992年
●めちゃくちゃに泣いてしまいたい (作詞:松井五郎/作曲・編曲:後藤次利)
●うらはら (作詞:松井五郎/作曲・編曲:後藤次利)
●声を聴かせて (作詞:松井五郎/作曲・編曲:後藤次利)
1993年
●わたしはナイフ (作詞:松井五郎/作曲・編曲:後藤次利)
●あなたしかいないでしょ (作詞:松井五郎/作曲・編曲:後藤次利)





驚いた。なんと10曲もあったのだ!
デビューからの6年間、いわゆる「後藤次利作曲時代」のシングルは20曲。
そのうちの半分が松井五郎氏によるものだったとは・・・。
アルバム収録曲やカップリング曲も含めると、相当な数に上るのではないだろうか。
祝!名コンビ復活!
今後もぜひ、このコンビによる新たな展開を繰り広げてほしい。
(ついでに後藤次利氏とのコンビ復活は・・・難しいのかな?。彼の「上下に暴れまくる」メロディラインと複雑なリズム展開も、彼女ととても相性がいいとは思うのだが。)

「月影」
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●「Fe-MAIL」にアルバムについてのインタビューあり。
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●Real Guideに動画インタビューあり。
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工藤静香「Memories」●アルバム「月影」レビュー09
どんなに離れていても 時間が過ぎ去っても
胸の内は変わらず
But I can't get this feeling out of my mind
今すぐ会いに行きたい この心を伝えたい
繰り返しよぎる想い
May be I am still being blind
Do you remember all the time we spent together
夢と希望で溢れた美しい日々
Do you remember all the moments that
we wish would last forever
こんなにかけがえのない人だったなんて

words,music,arrangement:
村山晋一郎
●POEM by.akaboshi●
「なつかしさ」は愛情とは違う。
わかっていてもどうしても
その人の痕跡が
勝手に記憶を呼び覚ます時がある。
激しく胸を衝いてきて
しばし痛みに立ち止まる。
それはほんの束の間の事だと
わかってはいるのだけれど。
苦い。そして痛い。
でもやがて・・・
あたたかさに変わる。
●REVIEW●
絵にたとえると点描画のようなアレンジ。
細かく刻む電子ピアノの音色とクールなボーカルを、あたたかい弦の調べが包み込む。
サビのすべてが英語詩。
クセの強い曲が集まったこのアルバムの中では無機質で影が薄い印象なのだが、
次第に心に浸透し、最近ではふとメロディーが頭を駆け巡るようになった。
自己の意志ではコントロール出来ない「記憶の想起」という現象。
その苦くも痛くも美しくも不思議な現象を、体現しているかのような曲だ。

「月影」
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工藤静香「くちびるを眠らせて」●アルバム「月影」レビュー08
衝動で引き寄せ 惰性で抱くひと
気づいてた 許してた feelin' lost in love
切り出せない弱さ 私も同じね
迷ってる肩を hold you in my arms

words:田形美喜子
music:DREAMFIELD
arrangement:華原大輔
●REVIEW●
最も派手でインパクトのある曲。
英語が多用された言葉遊びが楽しい詞。
ボーカルはここぞとばかりにドスを聴かせ、
まさに彼女の真骨頂。
最近穏やかな曲調のシングルが多かったので、ぜひこの曲こそシングル化して
大暴れして欲しかった。
嫌いになったわけではないのに
お互いの気持ちはすれ違う。
そして別れの決意をする際の
苦く複雑な心情。
切り出せないのは
優しさから?
それともリスクが怖いから?
自分が惨めになるくらいなら
別れを選ぶ強さが欲しい。

「月影」
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工藤静香「Rain」●アルバム「月影」レビュー07

心のすき間をふさぐようなキスで
特別な夢に落ちた
痩せる気持ちじゃなく膨よかな気持ちを
あなたから貰ったね
空に眠る銀河の道
星屑さえ 今は涙になった
「Rain」
words:愛絵理
music,arrangement:岡野泰也
●REVIEW●
工藤静香本人の作詞。
別れの歌なのだが、涙を雨にたとえながらも
充実した過去への感謝の気持ちを感じさせてくれるのが救い。
「痩せる気持ちじゃなく、ふくよかな気持ちを
あなたからもらったね」
・・・そんな風に振り返ることが出来たら、
つらくても無駄ではなかったと思えそうだ。
僕も、誰かに膨よかな気持ちを与えられるような
余裕のある人になりたいと思わされた。
(今はまだ発展途上っす・・・悲。)
関係ないが・・・雨って大好き。
わけも無くワクワクする。
なんでもない日常がちょっとずれて、
皆で傘をさす。
雨という異常事態を皆で「共有」している感じが好き。

「月影」
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工藤静香「BREAK OF STILL」 ●アルバム「月影」レビュー06
●POEM by.akaboshi●
人の視線を追いかけ 空の色さえ気づかない
小さなカゴではばたく そんなStyle似合わない
分かれ道照らす太陽 波は歩くように近づく
鼓動は高まり響いた 今がすべてさeverything「BREAK OF STILL」
words:川村サイコ
music,arrangement:Jin Nakamura
「これってチャンス・・・!」
気づいた瞬間の武者震い。
逃げ出したくなる心との葛藤。
「怖い。」
年齢や時間のせいにして
踏み出す一歩を躊躇する自己保身。
いつから臆病になった。
いつから
「飛んでみる」ことをしなくなった。
軽やかで
欲望は剥き出しで
ギラギラと
自由な僕。
それが僕だった。
すぐ現実のせいにする。
すぐ誰かのせいにする。
都合のいい人間だね、お前。
わかってんだろ。
カッコつけんなよ。
お前のせいだろ。
そう挑発するもう一つの心。
こいつが居る限り、
僕はまだ死んじゃいない。
死んでたまるか。

「月影」
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工藤静香「Lotus~生まれし花~」●アルバム「月影」レビュー05
二人の手を重ね合えば
ひとつの花が 見えるだろう
長い道をすすむ途中で 破けたような過ちは
許すことを知った未来を 照らして行くのだろう
星のようにいつも輝くよ あふれてる夢を重ねながら
哀しみは風に奏でられ 花びらを恋の色に染めて

words:山口寛雄・愛絵理
music:山口寛雄
arrangement:中野定博
●REVIEW●
作曲家がデモテープで口ずさんでいた「言葉よりも信じていた、どれくらい待っていたんだろう」という言葉に感動し、その後を工藤静香本人がイメージを膨らませて作ったという曲。
ファンにとっては2002年の「maple」以来3年振りとなるシングル。
今年の2月16日に発売された。
長年ファンを続けていると、彼女のその時々の精神状態を歌を通して知ることになるわけだが、いろんな試行錯誤を経て、ついにここまで幸せの歌を歌えるようになったのか、という親心にも似た嬉しさがこみ上げてくる。
実はアルバムでは歌を録音し直している。2コーラス目の冒頭部分。
シングルでは英語で表現されていたのを、アルバムでは「二人の手を重ねあえば 一つの花が見えるだろう」と、ストレートに日本語で表現した。
人と手のひらを同じ向きでつなぎ会うと、形が蓮(Lotus)の花のように見える・・・その発想が花が大好きだという彼女らしい。

次は歌手としてどんな幅を拡げてくれるのか。
人生と直結している彼女の歌手としての展開を、楽しみに見守り続けたい。
?この曲は、気持ちが穏やかな時に聴きたくなります。
自分の心に余裕があるかどうかのバロメーターともなっています。

「月影」
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工藤静香「月夜の砂漠」●アルバム「月影」レビュー04
月夜の砂漠に儚く光るダイヤ
乾いた心満たす涙で眠らせて
教えて聞かせて愛することの深さ
希望も包み隠す涙は無知なのか

words:愛絵理
music,arrangement:Jin Nakamura
●REVIEW●
真実(ほんとう)の涙を流し、
乗り越えられた者のみが持つ強さを歌う。
目の前に茫漠たる砂漠が広がろうと、
未知の闇に向かって凛として歩き出す。
もう、甘えていた日々には戻らない。
バンドネオンが激しく響く前奏から、力強く一気に駆け抜けるアップテンポのワルツ。
これぞ愛絵理の詞。抽象的だが選び抜かれた言葉たち。
彼女の曲にしては珍しく2コーラス目の後でサビを繰り返さないことで、聴く者に息つく暇を与えない濃密さと、緊張感を味あわせてくれる。
文句なしに、アルバム全体を象徴するであろう傑作。
自分の求めるものをはっきりと見定めている人は、なにがあっても強い。
そして、人間としても魅力的である。

「月影」
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工藤静香「心のチカラ」●アルバム「月影」レビュー03
シアワセの絵を描くなら 君のコトを思いだそう
そして微笑む気持ちを 悲しい人にわけてあげたい
笑顔は誰のためでもない だけど誰かをあたためる
きのうの雨が
やまないままで 夜明けが来ても

words:前田たかひろ
music,arrangement:h-wonder
●REVIEW●
人はたぶん、「愛された」という記憶さえあれば生きて行ける。
なにかにぶつかって挫折し絶望に打ちひしがれた時・・・
本当に助けてくれるのは、自分の心の中にほんの少しでもある「誰かに愛された」という記憶なのではないか。
それは、ほんの一瞬のイメージでもいい。
自分が今日生きているのは、いろんな人に育まれてきたからなんだ。
自分だって、誰かのそういう存在になりたい。
そう思えることが希望になる。
重厚なストリングスが力強く、爪弾くギターの音色がどこか切ないこの曲は、劇場公開のアニメ映画「ふたりはプリキュア マックスハート」の主題歌として企画され、この作詞家・作曲家とも初顔合わせ。4月にシングルとして発売された。このアニメはどうやら幼い女の子たちに人気らしいのだが、だからといってこの曲は、まったく媚びていない。実は転調を何度も繰り返す複雑な構造のメロディーであり、子どもが口ずさむには難易度が高い。こだわって苦しんで制作しただろう「生みの苦しみ」が感じられる曲だ。
いつもの、抽象世界をさまよう愛絵理の詞に慣れているファンとしては、こういった直球勝負のメッセージソングは逆に新鮮。この場合本人はボーカリストに徹しているのかと思いきや、実は作詞家とは綿密な打ち合わせをしたであろうことが伺える。例えば「シアワセの絵を描くなら・・・」といった表現や「きのうの雨がやまないままで夜明けが来ても」というところ。
「絵を描く」、「雨」、「夜明け」・・・
これらは彼女の歌には実によく出てくるお馴染みの情景なのである。
幼児向けアニメの主題歌というオファーで本人もきっと戸惑いながらの曲制作だったのだろうが、結果的に自分の色に染めることを忘れないところが彼女らしいところ。彼女が醸し出す「色(センス)」が感性的に合わない人は合わないのだろうが、僕にはなぜかフィットする。それは長年聴き続けてきたせいか?元々持っている感覚が似ているのか?。どちらでもあるのだろう。
人は、自分とどこか似ている人のことを好きになるものだ。

「誰だって願ってる、悲しむために生まれたんじゃない。
愛されるため。」
歌というものは、なにかの記憶と強く連動して心に刻まれる。

「月影」
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工藤静香「replay」●アルバム『月影』レビュー02
純情な心は疾うに死んだわ
気が付かないでしょ? 解ってないでしょ?
いい子のままで 泣くだけなんて意味がないの
荒く華奢な感情 求め探る情感
戻れないまま 浮遊しているの あなたを

words:愛絵理
music,arrangement:Jin Nakamura
●REVIEW●
「もっと愛して欲しい。」
心の奥底にくすぶる欲望が強くなればなるほど、
思い通りにならぬ苛立ちは強くなる。
一方、そこまで自分を虜(とりこ)にしてくれる相手に出会えたことへの、喜びのようなものも感じられる。
工藤静香本人の作詞だが、ファンにとってはお馴染みの「強がる女」的な言葉が随所に見られる。特にいちばん彼女らしいのが次の言葉。
「いい子のままで泣くだけなんて 意味がないの」
・・・そう強かるのだが、その声はなかなか届かない。
なぜなら
「すぐに抱きしめてよ」
「早く連れて行って」
「私の心 取り戻して」
という言葉が多用されるように、強がるけれど本当は、相手に主導権を握って欲しいのだ。
・・・待っているのだ愛されるのを。
ジリジリしながら(笑)。
~アルバムの一曲目は幻想的なインストゥルメンタル「intro」。
続く2曲目がこの曲なのだが、一転してアップテンポで疾走感のあるアレンジにハッとさせられる。その展開がなんともスリリング。
低音のベースがリズミカルに刻む中、鋭いボーカルが耳に心地いい。
そのクールな疾走感が、重くなりがちな詞をかえって生々しく際立たせる。
?わかっちゃいるけど、自分からは動き出せない。
だけど好きになってしまった状態からは抜け出せない・・・。
こうした感情はかなり身に覚えがあります。そして後悔してばかり(笑)。
待っているだけでは何も動かないわけだから・・・。
問題はプライドなんですよね、プライド。プライドがいつも邪魔をするんです、僕の場合特に。
プライドをかなぐり捨てて素直になれたら、どんなに楽になることか。
・・・しかし、「戻れないまま浮遊している」という表現は凄い。
でもある意味、浮遊している時がいちばん充実して楽しい時なのかもしれなかったりして。
工藤静香の書く詞は絵画的で、抽象的な部分があります。聴き手に答えを強制しないのでイメージを勝手に膨らませることができます。この曲で改めて感じました。
誤読だと感じる人がいても、それはそれでいいんじゃないかと思います。ここはあくまで僕が感じた主観を書いているREVIEWです。

「月影」
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工藤静香 ●アルバム『月影』レビュー01
息がつけない緊張感。
はじめて聴いた6月1日。いろんな意味で緊張していた。

育児に追われる毎日だろうから無理もない。
しかしたまに見かけるCMやアニメのアフレコ出演などは正直ファンとして疑問符のつくものだった。
「それはあなたじゃなくてもいいんじゃないの?」
移り変わりの激しい人気稼業。個人事務所の経営を維持するためにもそうした活動は必要なのだろうが、それにしても・・・。そうした「ママさんタレント」としての活動は、いかにも木村拓哉氏の妻としてのイメージに即しているだけ。そこには本人の主体性が感じられない。
主体性のない工藤静香・・・。
ファンとしては見たくない姿だ。
かつてヒットチャートをにぎわせていた頃に、彼女はこうした発言をしている。
「この人気はいつまでも続くものじゃくそのうち終わる。
将来は小さな所でもいいからボーカリストとして歌い続けていられればいい。」
「歌がなければ工藤静香として出ている意味がない。」
若い頃から自分の立ち位置を冷静に分析し、核になるものをしっかりと見定めていた。
そして本当のファンは、彼女のそうした信念からくるエネルギーが歌声に込められているからこそ、支持していた。映画やドラマに出演しても、必ず「主題歌」や「挿入歌」のタイアップが付いていたから、多少は演技がまずくても見ていられたのだ。小室サウンド一色の頃にも時流に乗らず、不器用だけれどもその時々に自分の求めている「歌いたい歌を歌う」という主体性が、工藤静香の魅力だったはず。
独立心が強く人一倍プライドの高い彼女だから、事務所の経営のために頑張ってるのだろうと我慢して見ていられるのは、本当に彼女の根幹を理解しているごく一部のファンだけだろう。
やはり人は「表現されたもの」からしか物事を判断できない。CM商品のキャンペーンで作り笑いを浮かべている彼女の姿をみて、離れて行ったファンも少なくないのではないか。
しかし彼女は止まっていたわけではなかったようだ。
6月1日。
アルバムを恐る恐る聴いてみて、そのことが確認できた。
そこには人間として清も濁も合わせ飲み、
相変わらず「歌うこと」と格闘している彼女がいた。
僕の緊張は・・・解けた。
次からは曲を聴いて感じたことを書こうと思います。

「月影」
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