フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2008-10
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かながわレインボーセンターSHIP・Presenceキャンペーン04●あなたはどう教えますか?「同性愛・多様なセクシュアリティと教育」03●誤解が根強いのはなぜ?



 前々回前回からの続きです。砂川秀樹さんは長年、大学の授業や講演会などでセクシュアル・マイノリティーについての話をしてきているそうですが、あらかじめ学生や聴講者たちが持っている「誤解の率」が、変化して来ているとは思えないそうです。それはなぜ?という話が今回の中心。

03●誤解が根強いのはなぜ?
  

 多数者の持つ固定的イメージ(偏見)と、社会制度における排除が、相互に強化し合ってカミングアウトしにくい状況を継続させているというのが砂川さんの見解です。次回はいよいよ講演のまとめ部分です。FC2 同性愛Blog Ranking

かながわレインボーセンターSHIP・Presenceキャンペーン03●あなたはどう教えますか?「同性愛・多様なセクシュアリティと教育」02



 講演や授業でセクシュアル・マイノリティーについて語るとき。まず最初に○×式の設問を投げかけるという砂川秀樹さんですが、その後、性的指向や性自認などの用語を使って、「多様な性の組み合わせ」をどう説明するのでしょう。

砂川秀樹さん講演02●多様な性の組み合わせ
  

 ただ単に、人には「身体の性」と「心の性」に、人それぞれのグラデーションがあって、「誰を好きになるか」においても、さまざまなバリエーションがあるのだという事を説明されるだけでも。「あぁ、そうか。」と、周りの人を見渡してみて納得することは出来るのではないでしょうかね。だからこういうことを知る機会は、「他者のことを理解する」という意味で、コミュニケーション・スキルの向上にも繋がりますから、多くの人にとって「有益」であるように思います。

 実は僕も、こうした捉え方があることを知ったのは今から2年前。2006年に国際基督教大学で行われた「尾辻かな子講演会」の場でした。つまり、ごく最近まで知らなかったのです。知ったことによって世の中の見方が新たに拓けて来るような気がしましたし、複雑なものを「複雑なままで」理解することの面白さを知りました。

 でも日本の現状では、あのような場に「自分から求めて」足を運ばない限り、また、自分から求めて本やネットから情報を得ようとしない限り、多くの人々は知らないままで過ごすことになります。そういう意味で「性の多様性」についての基礎知識が義務教育に含まれることの必要性を、僕は感じます。知った後、その知識を生かすのか、それとも忘れるのかはあくまでも受け手の自由。(教育とはそういうもの。)でも「知る機会」すら無い現状は、とても残念です。

 また、こうした情報に触れる機会が無いのは、若者だけではなく「大人たち」もそうです。「大人たち」にどう伝えていくのかも、まだまだ大きな課題なのではないかと思います。FC2 同性愛Blog Ranking

かながわレインボーセンターSHIP・Presenceキャンペーン02●あなたはどう教えますか?「同性愛・多様なセクシュアリティと教育」01



 前回紹介したかながわレインボーセンターSHIPの活動説明に続いては、砂川秀樹さんによる講演が行われました。ふだん、砂川さんが教壇から「セクシュアル・マイノリティについて」語るとき、どのような方法で行っているのか。そしてどのような問題意識を持っているのかが語られました。

砂川秀樹さん講演01●導入は「知識チェック」から
  

 まず導入で○×式の知識チェックを行い、参加者それぞれの「既存の考え方」を意識化させるわけですね。

 砂川さんといえば当ブログでは、今年の2月に行われたパフナイトで「カミングアウト・レターズ〜編者がパフにやってくる」に出演していることでもお馴染みですね。

RYOJI・砂川秀樹編著「カミングアウトレターズ」

 この本は「カミングアウトの多様性」を、奇を衒わず正攻法で、なおかつ「わかりやすく顕在化」させた本として、非常に画期的な出版だったのではないかと僕は思います。「親と子」「教師と生徒」の手紙に記された「言霊」のぶつかり合いによって、人としての普遍的な深い感情を揺さぶられます。セクシュアル・マイノリティー当事者だけではなく、広く共感を持たれる可能性を秘めた好著です。

 また、この本の出版がその後、NHK『ハートをつなごう』で「ゲイ/レズビアンシリーズ」の開始が実現する際に「最後の一押し」にもなったという意味で、今年の動きを(結果的に)牽引している本でもあります。まだお読みでない方はぜひ。FC2 同性愛Blog Ranking

かながわレインボーセンターSHIP・Presenceキャンペーン01●SHIP活動説明〜情報がいちばん伝えにくい層に届けるために



 8月2日(土)、真夏の真っ最中の非常〜に暑かった日。横浜駅西口のかながわ県民センターにて「かながわレインボーセンターSHIP」によるキャンペーン「Presence2008」の公開イベントが行われました。

 同会場で行われた第15回AIDS文化フォーラムin横浜に参加する形で行われたキャンペーンでは、東京メトロポリタンゲイフォーラムの協力により世界のLGBTに関する写真パネルなども展示。2階ホールで行われた公開トークイベントは『あなたはどう教えますか? 「同性愛・多様なセクシュアリティと教育」』というタイトルで、実際に大学などで教鞭に立っている砂川秀樹さん、クレア・マリイさんが講演を行いました。当ブログでは、砂川さんの講演を後日、紹介させていただきます。

 ではまず、イベントの冒頭に行われた「SHIP」代表のシンジさんによる活動説明を、今回は映像で御紹介します。スライドを映すために場内が非常に暗くなっており、映像も不鮮明になってしまいました。「音」だけでも聴いていただければ大体、内容はつかめるかと思います。

SHIPの活動01●大切なのは学校との連携
  

SHIPの活動02●情報がいちばん伝えにくい層に届けるために
  

 HIV/AIDS関連の予防啓発活動を行っているコミュニティーセンターとしては、厚生労働省からの支援を受けたところが既に4か所、全国にあります。「SHIP」は後発組ということで、神奈川県健康増進課の支援のもと、独自の方法論を持って活動を進めていることがわかりますね。

 特に「学校との連携」をとるために、あえてゲイバーや繁華街などの商業施設とは離れた場所に開設 することで、学生やクローゼットの人でも気軽に立ち寄れる場所であることを特色として打ち出しているようです。たしかに、「新宿二丁目」とか「堂山」というのは、そこに行き慣れた人々にとっては居心地の良い場所なのですが、抵抗感を持っている人々も少なからず(というよりも結構たくさん)いますからね。

 ただ、そんな「SHIP」も開設までには紆余曲折あったようで。入居しようとしても管理人が「HIV」「同性愛」という言葉に過剰反応し、13カ所に断られたとのことですから苦労がしのばれます。

 また、SHIPではいかに「情報の届けにくい層に届けるか」をモットーとしているようで、この日もスタッフの多くはイベント開始前に朝から逗子の小坪海岸 に出掛けて、コンドームを配布する活動(アウトリーチ)を行ってから、そのまま会場に来たそうです。いわゆる「真面目な感じの」イベントなのに、スタッフの方々が短パンだったりタンクトップ姿だったり、やたら肌が真っ赤に日焼けしているのは何故だろうと思っていたら、そういうことだったんですね(笑)。

 この日は、終了後には「SHIP」で懇親会も開かれたので、ブログ友達のDASS君らと共に参加しました。初めて行ってみたのですが、白のイメージで統一された室内は清潔感に溢れ、スタッフも若い人が多くて温かい雰囲気があって、久々に大笑いして腹筋が痛くなる思いをしながら過ごしました。・・・シンジさんの「真の顔」もチラッと垣間見たし。ね〜DASS君(爆)。

★SHIPでは9月6日(土)に、開設1周年を記念するパーティーを開催するそうです。まだ行ったことの無い人には、いい機会なのではないでしょうか。(以下SHIPスケジュールより転載)

日 時 9月6日(土)18時30分から20時30分
場 所 かながわレインボーセンターSHIPにて
会 費 お一人様1,000円

なお、ご参加にあたりましては9月5日までに下記までご一報頂けると幸いです。SHIP来場者の皆様や行政・教育・医療関係、LGBT団体関係者様など、多くの皆様のご参加をお待ち申し上げております。
亮介
ryousuke@y-cru.コム (コム→comに変えて送信してください。)

 さて次回は砂川秀樹さんの講演を御紹介します。FC2 同性愛Blog Ranking

続・第16回エイズキャンドルパレードin京都を見てきました。(参加してないのにインタビュー撮りばかり。笑)



 前回に続いて5月17日の京都で撮影した映像をご紹介。

 PLHNET(プラネット)のはんきーさんに続いては、大阪でHIV陽性者のピアサポートを行っているブリッジおおさかの「ゆうさん」に、お話を伺いました。これらのインタビューは例によって、BASE KOBEの繁内幸治さんが、僕が現地に着くなり紹介してくださったから実現できたのですが・・・互いに初対面なのにも関わらず、いきなりカメラを通して会話しているという、ある意味モノスゴイ状況の記録にもなりました(笑)

第16回エイズキャンドルパレードin京都「ともに生きよう」
●ゆうさんインタビュー (ブリッジおおさか)
  

■ブリッジおおさかとは?公式ホームページより)

 「ブリッジおおさかとは2007年9月に大阪をベースに活動を始めた、HIV陽性者によるHIV陽性者のための非営利の相互支援グループです。性別、セクシュアリティー、国籍、居住地域に関係なくHIV陽性者がより良い毎日が送れるように目指して活動が開始されました。プログラムの参加者が受身的な参加者ではなく、参加してくる人たちもまた支援者であるという事がブリッジおおさかの基本的な考え方です。同じHIV陽性者でも個々に抱えている立場があり、それに伴う様々な事情や問題を抱えています。その違いに目を向けながら、既存の諸団体、医療機関と手を取り合いながら各々の『架け橋』になれればと考えています。」

 それにつけても、話を聞くほどに今年の第16回エイズキャンドルパレードの時間に間に合わなかったのが惜しまれます。涼しげな初夏の京都の夜風に吹かれながら、キャンドルを持ってゆっくりとパレードする情緒。沿道には多くのレッドリボンが掲げられていたそうですし、16回を数えたパレードの歴史の厚みなどを、多くの人々と共有できたでしょう。いつかまた、今度は隊列に参加しに行きたいと思ってます。

 映像にはあまり映ってないかもしれませんが、参加者たちはパレード終了後に交流し合ったり、明るく和気藹々とした雰囲気が現場にはありました。このパレードの存在を知っているけれど、まだ参加したことのない方がいましたら、毎年5月の第3土曜日に開催されていますので、ぜひ一歩踏み出してみてはいかがでしょう。FC2 同性愛Blog Ranking

第16回エイズキャンドルパレードin京都を見てきました。(ただし終了後だったけど。笑)



 え〜っと、一ヶ月かけてようやく載せ終えた「やっぱ愛ダホ!」の神戸・大阪アクションの様子でしたが、実はあの日。そのあと京都に行ったんですよ〜(爆)。神戸の愛ダホ!に参加していたRYOJIさんや、BASE KOBEの繁内幸治さんらが参加するというキャンドルパレードを、見てみたくなったんですね〜旅先だと無茶を無茶だと思わなくなってしまうから怖いです(笑)。

 このパレードは、「PLHNET(プラネット);HIVとともに生きる会」が主催しているもので、今年でなんと16回目。「エイズで亡くなった人々の思いを炎に託しながら、エイズについての無理解や偏見をなくし、HIV陽性者が共に生きることのできる社会であろうと呼びかける啓発活動」公式ホームページより)として、毎年5月の第3土曜日に京都で開催されています。趣旨に賛同される方でしたら、どなたでも参加できるそうですよ。

 ところで僕は、大阪での撮影に予想外にのめり込んでしまったり、京都までの電車を乗り間違えたりしてしまったために、パレードの隊列が行進している時間に京都に着くことは出来ませんでした・・・(バカですね〜。)しかし、なんとかパレード行進後に、参加者たちが思いを語り合っている場には間に合うことが出来ましたので、そこで収録させていただいたインタビュー映像をご紹介したいと思います。

 まず今回は、繁内さんが紹介してくださった「はんきーさん」です。所属している「PLHNET(プラネット);HIVとともに生きる会」のことや、キャンドルパレードについて説明してくださいました。いきなり初対面で挨拶もそこそこに、なぜかカメラを廻したというモノスゴイ状況だったにも関わらず、応じてくださいました。★暗闇での撮影だったため、手持ちのキャンドルのみでちょっと映像がオドロオドロしくなってしまいました(笑)。はんきーさんゴメンナサイ!

第16回エイズキャンドルパレードin京都「ともに生きよう」01●はんきーさんインタビュー
  

 はんきーさんも語ってくださっていますが、もともと「HIVとともに生きる会(PLHNET)」は、1992年、「薬害エイズ」訴訟大阪原告団の第2代目団長であった石田吉明さんらを囲んで立ち上げられたエイズ啓発活動団体です。

 こちらのページにも記されていますが、「”STOP AIDS”ではなく、HIV陽性であっても当たり前に暮らすことのできる「ともに生きる」社会環境づくりをめざして京都という土地に根ざした活動を行なってい」るということで、パレードが16年間にわたって途切れずに開催され続けてきたということが、まずはスゴイなぁと思いました。

 僕は今回はパレードを見ることができなかったのですが、京都・祇園の街並みの中をキャンドルを持ってゆっくり歩くということで、独特の風情があるのではないかと思います。機会があれば是非、行進の様子も見てみたいなぁと思っています。さて次回はブリッジ大阪の方へのインタビューを御紹介します。こちらも、繁内さんが突然紹介してくださったのですが、その勢いに乗じてカメラを廻させて頂きました(笑)FC2 同性愛Blog Ranking

トランスジェンダー・ケイさんの大阪自彊館闘争、和解へ

 1月10日にGAY JAPAN NEWSが報じたところによると、性同一性障害を理由に2006年に解雇され、その不当性を訴えていたケイさんの「大阪自彊(じきょう)館闘争」は、社会福祉法人「大阪自彊館」側がケイさんに慰謝料180万円を払うことで、昨年末に和解という形になったそうです。

性同一性障害男性に180万円 雇用打ち切り訴訟が和解(GAY JAPAN NEWS)

 ケイさんの訴訟は2006年10月以降、テレビ朝日「スーパーモーニング」にて全国ネットで報道されるなど社会的な注目を集めていました。また、当人も関西レインボーパレードに参加したり、2007年5月に行われた神戸LGBTIQプライドマーチでは、アフターイベントの「L.T.mini」にて自作詩「赤いサンダル」をステージで読むなど、関西方面のコミュニティー活動の場で積極的に、この問題をアピールして支援を呼びかけてきました。その成果が実ったと言えるでしょう。

■再掲載
神戸LGBTIQプライドマーチL.T.mini06●ケイさん自作詩「赤いサンダル」
  
■初掲載時の記事(2007年6月13日)
神戸LGBTIQプライドマーチ参加記12●アフターパーティーL.T.mini03●エイズに学ぶ、心豊かになる為の神戸からのメッセージ

 改めて見てみると、また詩の意味が深く感じとれました。ところでケイさん、実は尾辻さんのPVにも出演してるんですよ。何処に出てくるでしょ〜?(ヒント:大阪での5月5日のイベント終了後に撮影しました。)

[ PV ] 尾辻かな子「Running to the rainbow」
  

 個人的な問題なんだと泣き寝入りせずに「社会の問題なのだ」と声を上げることによって、はじめてその声は「声」になる。そして「聞く耳のある人」にはちゃんと届くんだということを、ケイさんの行動から教えてもらいました。FC2 同性愛Blog Ranking

いまさら東京にオリンピックなんていらない

     ▽東京新聞9月2日掲載記事「『東京五輪』招致 石原都知事に聞く」より

「メンタル面では、日ごろの情操を培う基本的なものを精錬するとかね。新宿の二丁目と歌舞伎町は美観とはいえないよね。銀座でもごてごてと色があるし。景観法ができたし、規制力のある条例を今年中に作ります。」

 かつて、1965年に「東京オリンピック」という映画を監督した市川崑は、映画の冒頭に「破壊」のイメージを置くことで時代の空気を表現した。

 クレーンから吊り下げられた鋼鉄の大きな塊が、容赦なく古い建物を打ち砕いて行く映像は、日本の近代化を世界にアピールするための祭りの裏で、なにが犠牲になったのかを如実に浮かび上がらせている。

 戦後20年の蓄積。様々に花開き息づきはじめていたはずの東京独自の庶民の文化。多様な人々が多様な有り様で生活していた豊かな街。猥雑だけれど活気に溢れていた生活の場。それらが皆「近代化」の名の下に画一化され、無個性化されて行った。

 今、また「東京でオリンピックを」と石原慎太郎都知事が燃えている。東京オリンピック当時は作家として、三島由紀夫氏らと共に若者文化の旗手だったはずの人。そんな彼が今、東京の文化を再び破壊し、画一化する政策を推し進めようとしている。

 時代はもう「高度経済成長」を欲してはいない。日本は充分豊かになった。
 今更がむしゃらになって背伸びをし、世界に存在をアピールする必要などない。

 「多様な生」は、個性的な街の中で息づき花開く。
 無個性な街では「無個性な生」が培養されるのみ。

 色はたくさんある方がいい。
 個性的に咲き乱れるたくさんの色のある街こそ、
 東京が世界に誇る文化であり、世界が東京に期待する姿である。


市川崑「東京オリンピック」
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アカデミー賞は日系3世のドキュメンタリーにも注目

 フツーの視点で原爆を語る。

 今年のアカデミー賞。
 「ブロークバック・マウンテン」や「トランスアメリカ」以外に、僕としてはこちらの作品にも注目しています。

 短編ドキュメンタリー部門にノミネートされた「ザ・マッシュルーム・クラブ」(原題「The Mashroom Club」 )という作品で、監督は日系3世のスティーブン・オカザキさん。
→公式HP

 彼は米カリフォルニア州バークリー在住の映画監督で、これまでにも1985年に「公式命令9066/日本人強制収容所」(原題「UNFINISHED BUSINESS〜The Japanese American Internment Cases」が長編ドキュメンタリー賞にノミネート。
 1991年の「待ちわびる日々」(原題「DAYS OF WAITING」では、短編ドキュメンタリー賞にノミネートだけではなく受賞も果たしています。一貫して第二次世界大戦という歴史を基点に日本とアメリカの関係にこだわり続けているドキュメンタリストです。

 毎日新聞2/21夕刊「ひと」欄のインタビューによると「ザ・マッシュルーム・クラブ」を作るきっかけは、1979年に友人が英語に翻訳した漫画「はだしのゲン」を読んだことだそうです。戦後50年目の1995年に、米国ではあまり原爆のことが話題にならなかったことに問題意識を持ち、戦後60年を機に昨年、作品を完成させました。

「日本側は被害者の立場だけを強調し、米国側は放射能汚染に触れたがらない」

 ・・・そんな両国それぞれの原爆言説の偏りにかねてから疑問を持っていたというのが、彼ならではの着眼点。日系3世という立場は、日本とアメリカのどちらにも距離を感じるらしく「日米のはざま、太平洋に漂っている」ような感覚をもたらすようです。どちらにも属していないという意識は、どちらにも批判的な視点を持つことにつながります。むしろ彼のようなドキュメンタリストには必要なことであり、財産でもあるのでしょう。

日米とも、加害の歴史に触れるのは「怖い」のだ。

 長年アメリカに住んでいるだけあって、「米国人の心のつかみ方は心得ている」というのが彼の強み。「米国人は原爆の話や映像が怖いのだ。怖がらせず、被爆者の話を聞いてもらえるよう工夫した。」・・・彼の発言からは、率直で真っ直ぐな人柄が窺えます。日本がアジア各地での加害責任と向き合わずに隠蔽しがちな態度を取っているのと同じように、アメリカの人々が原爆被害から目を背けがちであることを「怖い」ということばで表現しているのが印象的です。
 そういえば、ハリウッド映画で原爆を扱ったものはまだ制作されていませんね。原爆投下を「第二次大戦を終わらせた歴史的な出来事」と見ている割には冷たい扱われ方です。やはり「怖い」し「触れたくない部分」であり、出来れば考えたくないのでしょうね。

「原爆を政治問題化せず、被爆者の話を聞こう。数年後に彼らはいないかもしれないから」

 「原爆もの」というと、日本でこれまでに作られてきた作品はどうしても、被害の悲惨さや人命の尊さを情緒的に訴えてくるものになりがちでした。
 もちろんそうした作品は「あの悲劇を忘れない」ためには必要だし意味のあることですが、日本人の既成の原爆観を補強する役割しか果たせていないようにも思います。

 「原爆投下」については様々な歴史的解釈が存在し、なかなか対話が進まないままでいる現在。そこには政治的な思惑も複雑に絡んでいます。そして、安易に一昔前の「イデオロギー対立」の時代の図式に結び付けて感情的に捉えられがちである状況は続いています。この作品がそうした現状に対して何か思考を深めるものになっているのかどうか、未見なのでわかりませんが、彼のような立場の人が作ったということで新しい柔軟な視点が獲得できているのではないかと思います。もし日本で公開される機会があったらぜひ、見てみたいと思います。

 「原爆投下は正当だった」とほとんどの国民が思っているとメディアによって伝えられているアメリカにおいて、アカデミー会員たちがどんな評価を下すのか。原爆を真正面から扱ったこの作品の動向に注目したいと思います。

 スティーブン氏は現在、アメリカで若者に人気のケーブルTV「HBO」の依頼で、2007年から原爆シリーズを放映するために広島、長崎、米国の被爆者を取材しているそうです。
 彼のように「宙ぶらりんで、どちらに対しても批判的な立場を取れる」ことをプラスにして最大限に生かしている姿勢は、ゲイである僕に、なんだかとても勇気をくれます。

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映画「ペパーミント・キャンディー」新文芸坐で26日上映

「ウォンビン兵役報道に思う」で紹介した映画「ペパーミント・キャンディー」が、池袋の新・文芸坐での特集上映「“韓流”シネマコレクション2006」で26日(木)に上映されます。僕はかつてこの映画を見て、とてもショッキングで深い感銘を受けました。とても大好きな映画なので、パンフレットを引っ張り出して再読してみました。

この映画は、日本と韓国が共同で文化事業に取り組んだ最初の映画だったらしいです。1999年にNHKと韓国のイースト・フィルム・プロダクションが共同製作。当時としては画期的なことでした。
2000年1月1日にソウルの少数の映画館で封切られるや口コミで評判が広がり、一気に上映館が広がったそうです。何度でもこの映画を見ようという「リピート運動」まで展開され、カンヌ国際映画祭、モントリオール世界映画祭などの映画祭でも高く評価されました。

物語は40歳の男が人生に絶望し、自殺をしようとするところからはじまります。そして彼の人生を少しずつ遡りながら、結果的に韓国の現代史の闇が浮かび上がる構造になっています。映像表現としても美しく、物語としての娯楽性にも秀でた稀有な映画です。
監督のイ・チャンドン氏の言葉を紹介します。

あの映画では個人だけを描いたというよりも、韓国社会の20年間も描いたと言えます。映画のスタート地点は、1979年で(主人公の)ヨンホは20才です。韓国という国も青年時代でした。(中略)あの時代は貧しかったけれども希望があった。20才のヨンホがカメラマンになりたいという希望を抱いていたようにね。それから自己への裏切り、自己否定の時代、夢や理想を忘却していく時代になったのです。

「ウォンビン兵役報道に思う」でも触れましたが、映画の主人公ヨンホは光州事件の時、たまたま軍隊に徴兵されていたために同世代の若者たちを「弾圧する側」に立たされトラウマを負います。その後は刑事となって労働組合員を拷問する立場になり、やがては実業界で成功を修めるのですが・・・彼の人生からは大切なものがどんどん欠けて行くのです。

光州事件が起きた1980年5月、私は25才でしたが、当時の大学生は民主化運動の真っ只中で、光州のことは噂で伝わってきていました。全斗煥 の新軍部がその後の政権を握って、私は絶望しました。ああいった政権が生まれて支持されるという社会システム、人に対する不信感。純粋な自分には理解することができないほどの絶望感でした。そして、この絶望感が、のちの私の人生を支配することになるだろうと思いました。

(光州事件に関しては)報道規制がなされたため詳細は報道されませんでした。事件の真相は詳しく知らされていません。今回の撮影でも光州の場面が一番苦労しましたね。国防省の許可がとれなくて物理的な面で苦労しました。(中略)現在の韓国は民主化の時代と言っても、やはり光州のことは軍の恥部なので、協力を得ることはできませんでした。

なおこの映画は、当時まだ無名だった俳優のソル・ギョングさんを一躍有名にした作品としても知られています。彼はこの映画での演技力が高く評価され、その後「シルミド」「燃ゆる月」などに出演。3月には「力道山」の公開が控えており、カメレオン俳優と呼ばれるほどに役によってガラッと印象を変えることの出来る名優です。
2002年に彼は再びイ・チャンドン監督作品「オアシス」に出演。26日の文芸坐ではこの二作が二本立てで上映されます。興味のある方はぜひ。
●上映時間
「ペパーミント・キャンディー」
・・・12:45/5:45
「オアシス」
・・・10:20/3:20/8:15(終映10:30)
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☆関連記事・・・イ・チャンドン「ペパーミント・キャンディー」●MOVIEレビュー

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