フツーに生きてるGAYの日常

やわらかくありたいなぁ。

2017-06
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大学時代、ゲイを演じることになり・・・完結

ハプニングを乗り越え、カーテンコールも終了し、初日の公演は無事終了。観客を送り出すために役者達は入口に並びます。
観終わったばかりの上気した観客たちが出てくるのを「ありがとうございました~」と見送るわけですが、そこに両親の姿があるのを見つけて驚きました。なぜならこの公演のことは、教えた覚えがなかったからです。

公演の直前というのは準備で大忙しになり、朝早くから出かけ、帰りは深夜になります。学校に泊り込んだりもしていたので顔を合わせにくくなっていたということもあるのですが・・・。僕の心の中で両親に知らせることへのためらいが無かったと言えば嘘になります。
しかし両親は、「この忙しさは公演前に違いない」と気づいていたらしく、僕の留守中に、用事があって電話してきた演劇部の同級生から、ちゃっかりと公演日程を聞いていたのでした。

僕は恥ずかしいので気付かぬ振りして、友人たちに「ありがとう~」と話しかけていたのですが、両親はそんな気も知らずに寄って来ます。
「なんで知らせないのよ。」
母が言います。
「忙しかったから。」
そっけなく応える僕。
「身体に気をつけろよ。」
父はそう言ってさっさと行ってしまったのですが、その時母が屈託ない笑顔で言いました。
「こういう内容だから知らせなかったの?」
うわっ!来た!・・・と焦った僕は
「いや・・・べつに。」
とはぐらかします。
「ちゃんと知らせなさいよ。お父さん、楽しみにしてるんだから。じゃあね。」
それ以上話を発展させず、母も帰って行きました。自分の気持ちを「誰かが言っている」という風に表現するのが母親の常套手段。そして、思ったことをストレートに言って来るのもこの母親。深い意味を込めて言っている訳ではなさそうだったのですが、真意の程はいまだに定かではありません。

お客さんが皆帰ったあと、先輩はすぐに僕の所に飛んで来て
「本当にゴメンなぁ。真っ白になっちゃって、とりあえずキスしてりゃあ誰かが何とかしてくれるだろうと開き直っちゃったよ~。」
と手を合わせて必死に謝ります。
「苦しかったけど嬉しかったです(笑)。
明日もヨロシク。」
と、とりあえずジョークの中に本音を含ませて応えておく僕。それを聞いていた先輩の彼女役の人がすかさず、
「ホント最悪だよね~。あたしあの時、マジでムカついたからカバンをおもいっきり叩きつけちゃった。」
と、機転を利かせたのではなくキレたのだということを明かします。たしかに、ものすごい音がしたことは確かです。・・・やってくれます(笑)。

反省会で演出家は
「まったくヒヤヒヤさせるわね~。あたしのつまらない脚本への挑戦状?」
と笑いながら毒をまぶしてきました。
「まあでも成立してたから許すけど。明日こそは初日が出るようにヨロシクね、じゃ、お疲れ。」
そう言って例の如くクールに帰っていきました。

「初日が出る」というのは演劇の現場で演出家がよく使う言葉。
彼女がこういう言い方をしたということは、演出家としてはこの初日の公演には納得が行かなかったということを意味します。
根が真面目な先輩はこの言われ方が気になったらしく「もう二度と繰り返したくないから」と、翌日この3人だけで自主稽古をしようと提案しました。

翌日、劇場の鍵が開く前に建物の裏口前で集合した3人は、野外の駐車場の片隅でその場面の反復稽古をしました。もちろん本物のキス付きで。
僕は一度目のキスよりも、この時の感覚の方をよく憶えています。
野外で、気の知れた仲間しか見ていないという安心感の中だったので、十二分にキスの感触を楽しむことが出来ました。
先輩は「一度しちゃうと、けっこう平気になるもんだね~。」と言いながら、僕を使って何度もキスの稽古をしてきます。彼女役の人は「もうちょっとこうしなさいよ。」と、ニヤニヤしながらキスの形を指導します。僕は二人に任せ、されるがままに何度も先輩のやわらかい唇を楽しみました。
もちろん表向きは「あんまりやると感動しなくなるね~。」と二人には言っておきましたが・・・内心では幸せにひたっていました(笑)。

思えば、僕の「ファースト・キス」だからとぶっつけ本番を提案してくれた先輩ですが、実は役者として不安だったんだと思います。そのやさしさに気付いた時、ますます先輩を尊敬し、好きになって行きました。彼女がいるのは知っていたし、そんな度胸も無かったので告白はしませんでしたが、公演期間中は本当に大好きでした。本番が幸せでした。
いつも彼女を公演に呼ぶ先輩ですが、この時は呼ばなかったと後で聞きました。

7回の公演は一応好評だったらしく、回数を重ねるたびにお客さんは増えて行ったようです。
小さな会場だったので満席になり、千秋楽の頃には入れないお客さんが出たほどでした。
終演後友だちに会うと、皆一様にキスシーンの事に触れてきます。
「ショックだったよ~」とか「どんな感じだった?」とか。
一人、毒舌で有名な女の子が
「キスのとき異常に生き生きとしてたね。自然だった。」と言い残して帰ったのには、さらなる冷や汗をかかせてもらいました(笑)。

初日以外は段取り的なミスはなく全日程は終了。打ち上げはカラオケで盛り上がるのが恒例でした。
僕は「飲み」の場が苦手でいつもおとなしくしていたのですが、この時、後輩の誰かが「キスシーンがちゃんと見たい」と言い出しました。稽古場では本物のキスを控えていたため、その場面に出ている3人以外の役者は、楽屋にいたのでその場面を見ていないのです。
突然「キス」の連呼が始まり、なぜかデュエットで女役を歌わされ、間奏でキスをさせられました。

その頃の僕は普段おとなしいイメージで通っていたので一応「いやがる」そぶりで照れながら応じたのですが、内心では「ラッキーッ!」と有頂天。酒が入っているので先輩はかなりエキサイトしています。本番の何倍も大げさに力強く僕を抱擁し、激しくキスをしてくれました。
先輩が大胆にやってくれるので僕も大胆に抱きつき返し、その場は大いに盛り上がります。
「付き合っちゃえば~?」と声がかかり、
「俺、目覚めちゃおっかな~(笑)」
とサービス満点に応える先輩。
でも、それはあくまでも「役」を与えられた上での束の間の出来事。
翌日からは「役」を脱ぎ捨て、なんでもない日常がはじまってしまいます。
僕はそのことに思いを馳せ、悲しみがこみ上げてくるのをグッと我慢しながら、何度も皆にサービスする先輩に応じました。

この夜は、僕にしてはめずらしく酔いつぶれました。
若さによる勢いと、セクシャリティーの自覚の中途半端さと。
その微妙なバランスが拮抗していた時期だからこそ味わえた、不思議だけれども
あたたかい、大切な思い出です。

<終わり>

長期にわたる不定期連載におつき合いいただき、ありがとうございました。
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大学時代、ゲイを演じることになり・・・15

どんな舞台でもそうなのですが、初日の緊張感というのは並大抵のものではありません。稽古は「内輪」の人間しか見ないものであり、本番になってはじめて観客という「他者」の前で演じるわけですから。思わぬところで笑い声が起こったり、ざわついたり、反応がダイレクトに感じられるので面白くもあり、怖くもあります。

僕にとっては生涯はじめてのキス。しかも観客の目の前で。でも精神的には先輩の掌の上で踊らされている状態になっていたので、全然怖くはありませんでした。むしろ早く見て欲しくてしょうがない、早くキスしたくてしょうがないといった感じ。
先輩の唇は少し分厚くて柔らかそう。すでに役を通しての擬似恋愛状態になっていた僕は、演じていて嬉しさがこみ上げてきます。
僕の役は一度車に轢かれて死んでから、天使に頼み込んでもう一度死ぬ直前からプレイバックさせてもらうわけですが、天使に頼みながら、気持ちが入りすぎてしまい涙が出てきてしまいました。そして、いよいよキスシーン。
車にはね飛ばされた僕を先輩が抱きかかえます。ライトの熱で汗だくの先輩。なぜか半分泣いている僕(笑)。
先輩の胸からドキドキと鼓動が伝わってきます。

ここでハプニングがありました。
台本では先輩が
「しっかりしろ!お前がいなくなったら俺はどうすりゃいいんだよ!」
と言った後、僕が
「ずっと・・・好きだった。」と言ってからどちらからともなくキスをするはずなのですが、
先輩も舞い上がっていたのでしょうか。
「しっかりしろ!」と言っただけでいきなりキスをしてきたのです。

びっくりしました。
覚悟は出来ていても、稽古とは全然違うタイミングで突然来られたのですから。
でも、やってしまったものは続けなければなりません。それが演劇というものです。
先輩の体温が伝わってきて、ジワーッと身体の力が抜けそうになるのを懸命にこらえながら、僕は先輩の肩に手を廻しました。瀕死のはずなのに、力いっぱい抱きしめてしまいました。
そして、その場の機転でしょうか。
抜かしてしまった台詞をやっぱり言いたかったので、僕に吸い付いている先輩の顔をゆっくりと放し、瞳を見つめながら
「ずっと・・・好きだった。」
と言いました。そしたら先輩も機転を利かせて
「俺もだ!」と、なぜか叫びながら言いました。そして、どちらからともなくもう一度力いっぱい抱きしめて唇を合わせました。
先輩はいつになく興奮しています。舌は入れてませんがものすごい吸い付きなので僕は苦しくなってきます。正直、痛かったし(笑)。しかもなかなか離れる気配がないのです。
このままではキスが終わらず、物語が進行しません。どうしようかと思っていたその時・・・
先輩の彼女役の人が機転を利かせて、持っているカバンを物音立てて落としてくれました。
先輩はそれでハッと我に返ることができ、台本どおり彼女の存在に気付き僕を突き放します。
こうしてめでたく僕は再度、車に轢かれて地獄へ旅立つのでした。

終演後気づいたのですが、この公演には両親も観に来てしまっていました。

<次回でやっと(笑)完結予定>
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大学時代、ゲイを演じることになり・・・14

本番開始30分前。
役者は楽屋に待機し、劇場にお客さんが入りはじめます。
楽屋まで聞こえてくるざわめき。
嫌でも緊張は高まってきます。
僕はそれまで、その時間をなるべく一人で過ごすようにしていました。役に集中して成りきるためには、いろんなシミュレーションをしなければならないと思っていたから。

しかしこの時は違いました。先輩が意識的に僕のそばにいてくれて、なにかと冗談を言い続けてくれたのです。僕がすぐに緊張して自分の世界に閉じこもってしまいがちであることを先輩は何度も見て知っています。しかも今回は僕にとって公衆の面前で初体験をしてしまうという緊張もあるわけで。さりげなくずっと馬鹿話をしていたら、いつの間にか開演の時間になりました。

先輩がしてくれたこのさり気ない心遣いのおかげで、僕は見事にリラックスした状態で舞台上に出ることが出来ました。それまでとは違って、演じていながら冷静に先輩のことや周りのこと、暗闇の中のお客さんのことまで感じながら演じることができました。
へんに緊張しすぎて自分のことしか見えなくなった演技ほど見苦しいものはないと思います。人間、誰だって常にいろんなことを意識に入れながら日常を過ごしています。いくら舞台上といえども、演じるのはその普通に生きている人間の姿。緊張に身を硬くして目を血走らせている人間など日常にいないわけですから。
それまでの僕はまさに、そういう無駄な緊張の中で演じることが演技だと錯覚していました。でもこの舞台で先輩と演じた経験は、その間違いに気付かせてくれました。

面白い位に自分がリラックスしています。稽古してきた台詞が自然に口から出てくるのです。先輩のリラックスが僕に伝染しているような感覚。それはその時期、僕が役を通してだけではなく本当の自分としても、心から先輩を信頼し「愛する」ことが出来たから達することが出来た境地なのだと思います。

物語の中で僕の役は、先輩と女性が仲良くしているのを嫉妬しながらも本心を隠して明るく振舞う場面が多かったです。本当に嫉妬したし、嫉妬すればするほど明るくすることが出来ました。その反面蓄積される内面の憎しみも自然に内から湧いて出て来ます。下手に表情で表現せずとも自然と自分がそういう状態になっているのです。
演技って、そういうことなのだと思います。

そして、あっという間にキス・シーンがやってきたのです。

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大学時代、ゲイを演じることになり・・・13

役の上で先輩のことを好きになっている状態が続くと、不思議と普段も先輩が魅力的に思えてきます。実際優しくて、うまくリードしてくれて、ファースト・キスのお膳立てまでしてくれるとても魅力的な人なので当然ですが。
いよいよ本番前の最終リハーサル。
照明の下で衣裳や小道具、メイクも本番どおりに行います。ディテールが整ってくると「役」がますます自分の中に息づいてくるのがわかります。
最終リハーサルでも稽古場と同じようにキスはせず、フリをしただけでした。でも、たしかこの時はじめて「本当にキスしたい」と思ったことを憶えています。

照明の下で演じると、まぶしさによって役者には周囲や客席が見えなくなります。相手役や舞台上のセット以外のものが目に入らなくなるので、とても演技に集中しやすい環境になります。
いつも鋭い目を光らせている演出家の姿も見えなくなるので、まさに解き放たれた鳥のよう(笑)。これなら本番のキスシーンも照れずに出来そうだと、手応えをつかむことが出来ました。
キスのシーンでは、ライトが熱いからか、顔を近づけたら先輩は汗びっしょり。キラキラして魅力的でした(笑)。

本番前、演出家からの最後の「ダメ出し」での発言。
「だんだん二人の愛が見えてきた。もう、充分に見ている人には感じられるようになってるから、それ以上説明しようとはしないでね。説明的な演技って観客を馬鹿にする行為だから。毎回、新鮮に楽しんでね。」
・・・嬉しい言葉だった。
さらに彼女はキスシーンについても言及した。
「キスは、演じていてもし気持ちが乗らなかったらしなくてもいいから。
しなくても充分、わかるようには作ってあるの。安心して。
本当に出来ると思ったときだけにして。嘘ではしてほしくないの。」
・・・彼女なりの挑発だったのだろう。それを聞いた先輩は
「よ~し、絶対に毎回しような。」と、僕の肩を抱いて言ってくれた。・・・ドキドキした(笑)。

いよいよ、そのときが来てしまうのだ。
ただでさえ本番初日というものは必要以上に緊張する。
でも・・・先輩を信じてみようと思った。

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大学時代、ゲイを演じることになり・・・12

先輩が話を通しておいてくれたので、稽古場では形だけのキスとなりました。
つまり接近はするのですが唇は付けず、ギリギリのところでずらしておくのです。僕はそれだけでも緊張して、息を止めて目をつぶって硬直していたのですが・・・何回かやってるうちに徐々に慣れてきました。
役者というものは稽古を重ねるほどに、だんだんと役の人物の内面を自分のカラダでも実感しはじめ、心が動きだすものです。頭で解釈していたものが「自分のものとなる」瞬間です。僕も先輩も、だんだんそういう気分が出せるようになって来ました。
稽古場でやる最後の通し稽古の頃には、かなり先輩のことを愛しく思う感情が芽生えて来ていたように思います。これは役者としては歓迎すべきことです。でも、素の状態でも先輩を見るとドキドキしてました(笑)。そして、あの唇とキスができるということが、ひそかに楽しみになってきました。

先輩は本当に優しい人です。
稽古でのキスシーンでは唇をつけないので、固くなっている僕にこっそり変な言葉をささやいてリラックスさせてくれました。役者って、こっそりふざけたことが出来るくらいにリラックスして演じていた方がいいものなんです。先輩はそういう意味でもリードしてくれます。
はじめの頃は「やってらんねぇ~」とか「早く帰りてぇ~」といった演出家に対するグチが多かったのですが、だんだん内容が変わってきました。
「早くしたい。」とか「やっちゃおっか。」とか、色っぽい言葉で僕を動揺させるようになってきたのです。
僕は照れ隠しで「ダメ」とか「ヤダ」とかその場は返してたのですが、だんだんそれが楽しみにもなって来ました。

校内での稽古は終わり、いよいよ劇場へ。舞台の仕込みが終わり、いよいよ照明の中で最終リハーサル(ゲネプロ)です。衣裳もメイクも本番どおり。

その頃には、僕はすっかり先輩のことが好きになっていました。


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大学時代、ゲイを演じることになり・・・11

先輩が言う「名案」とはなんなのか。
僕は、心臓が飛び出しそうになりながらそれを聞きました。
「せっかく今までしたことがないんだったら取っておこうよ。稽古場でやっちゃうなんてもったいないじゃん。演出家にも言っておくからさ、稽古のときは「振り」だけにしておいて・・・本番の初日に本物のファースト・キスしようよ。」
「はぁ?」
僕は頭から火を噴きそうでした。そんなこと思いつきもしなかったからです。
「そんな・・・稽古もしないなんて、危険すぎますよ。」
「大丈夫だよ。だって俊行(僕の役名)だって、この時が初めてだったんだから嘘じゃないし、かえってリアルでいいじゃん。そうしようそうしよう、決まりッ!」
「ちょ・・・ちょっと待って。」
「じゃ、俺はこれで。本番楽しみにしてるゼ~。」
能天気な先輩はさっさと帰ってしまいました。
残された僕はただただ呆然自失・・・。

やっぱり、いきなり「練習させてもらってもいいですか」なんて言っちゃったもんだから、とりあえずこの場を逃げたくなったのかも・・・とも思いましたが、あのアッケラカンとした先輩にそういう裏表があるとも思えません。
しばらく色々と考えてみた結果、僕も先輩のアイデアに乗ってみようと決意は固まりました。

考えてみたら、そんなリアルで演技とも真実とも付かないようなことを、本番でお客さんの前で出来ることなんて滅多にないでしょう。試みとしてはわくわくします。
あと、残る懸念材料としてはあの演出家がOKを出すかということでしたが、翌日の稽古ではもうすっかり話は通っていました。
先輩は僕との居残りの後、その足で演出家のアパートに行き、話しを通しておいてくれたのです。

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大学時代、ゲイを演じることになり・・・10

先輩は二つ返事で居残りに応じてくれました。僕がキスシーンを不安がっているのをわかってくれていたようです。
誰もいなくなった稽古場の教室で軽くパンを食べながら、まず追加シーンについて語り合ってみました。
演劇では共演者との信頼関係が大切です。その点、この先輩は非常にフレンドリーな性格で、話をしていても相手をリラックスさせてくれるような人でした。だから僕も、この人になら・・・と思い、おもいきってキスシーンについて相談してみることにしました。
つまり、正直に言ったのです。
自分にキスの経験が無いことを。ファーストキスになることを。

ところが先輩はべつに驚く様子もなく
「やっぱそうでしょ、わかるよそれくらい」と言いました。
「どうして?」と聞くと
「この一年、ほぼ毎日のように一緒に過ごしてきたんだから、それ位のことわからなくてどうするよ」
と言って笑いました。
つまり僕が演出家にキスの経験を聞かれた時に嘘をついたことは、先輩にはバレバレだったというわけです(たぶん他の人にも・・・笑)。
「じゃあ、俺とのキスがファーストキスか・・・。嬉しい?」
続けて言われたこの発言にはドキッとしましたが
「それはないっ!」と即答して笑い合うことで、なんとかその場は濁すことができました。

今思えば、僕がGAYであることもあの先輩なら見抜いていたということなのでしょう。でも当時は「自覚しないように」逃げていた部分だったので、僕にはこうした返答しかできませんでした。この時に「やっぱりわかります?」と軽く切り返せるような性格だったら・・・その後、もう少し楽に生きることができたのかもしれません(笑)。

それから僕は思い切って言いました。
「そういうわけで・・・変かもしれないけど・・・練習・・・させてもらってもいいですか?」

先輩は、今度は黙り込んでしまいました。
しばらく沈黙がありました。
そして、こう言ったのです。
「じゃあさ、名案があるんだけど・・・。」

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大学時代、ゲイを演じることになり・・・09

休憩後、演出家は書きなおした台本を配りました。

・・・僕は、絶句。
・・・先輩も、絶句。

彼女が書き直したのは、キスシーンの描写だったのです。
そして、さらに輪をかけてベタベタな展開になっていました・・・。

まず、瀕死の状態で僕が一方的にキスされるのではなく、両者が求め合ってキスをするという表現に変えられてしまいました。どういうことかというと・・・
僕の役はとりあえず
「・・・僕・・・シアワセ。」
と言ったところで目を閉じた時点で死んでしまいます。
僕の身体からチカラが抜けるのを感じた先輩は狂ったように泣き叫びますが・・・。
そこでいったん暗転になるのです。

次の場面で、僕は天使に出会います(笑)。
その天使はこの劇の狂言回しのような役割で、ことあるごとに出てきてちょっかいを出すのです。
僕はいわゆる死者の霊魂として天使と話すのですが、どうしてもこのままでは死にきれないことを訴えます。そして、自分の死の場面のやり直しを頼むのです。
すると天使は悪魔の格好になり(笑)
「お前は天国へ行かれなくなるがそれでもいいのか。一時の満足のためにこれからずっと苦しむことになるぞ」
と言うのです。僕は
「それでもいい。」と承諾し、悪魔の合図で場面は交通事故の直前に戻ります。

場面は繰り返され、やっぱり僕は車にはねられます。しかし、さっきよりも軽症であり、わりと元気なのです。それでも瀕死のふりをします(笑)。
駆けつけてきた先輩は、同じように「大丈夫かあー!」と僕を抱きかかえます。
「ダメ・・・かも」
同じ言葉を繰り返す僕。
「しっかりしろ!お前がいなくなったら俺はどうすりゃいいんだよ!」
先輩が同じこの台詞を言ったあと、僕は今度はこう言います。
「ずっと・・・好きだった。」
先輩はハッとして、動きを止めます。
そしてお互い無言のまま・・・どちらからともなくキスをするのです。

キスをした後、彼女が見ていることに気づき、先輩はハッと我に返ります。
そして、僕を突き放してしまうのです。
僕は嬉しさに夢うつつになり・・・車道へフラフラと飛び出し再び轢かれます。
そして今度こそ死んでしまうのです。
先輩は僕の死後苦しみ続け、彼女とも別れることになります。
だから僕は天国へ行かれなくなり、悪魔によって地獄へと導かれるのです。
僕は幸せそうな顔のまま、悪魔の指図に従い地獄の責め苦を味わいます・・・
(どーゆー展開だっ!?)

本番まであと数日・・・やるしかありません(笑)。
新しい台本を持ちながら嬉しそうに形をつける演出家。言われるがままに必死でやってみる僕たち(笑)。
とりあえず台詞を入れるために、立ち稽古は翌日に延期になりました。
だけど僕は、稽古でいきなりキスをするのにはやっぱり抵抗がありました。
そこで、その日の稽古終了後、先輩に残ってもらって練習をさせてもらうことにしました。

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大学時代、ゲイを演じることになり・・・08

いよいよ追加シーンの立稽古が始まりました。
僕は前の晩の徹夜がたたり、頭がかなりボーっとしてました。しかもその日ばかりは歯ブラシを持参し、歯を磨いて稽古に臨むという念の入れよう(笑)。
相手役である男の先輩も、なんだか落ち着かない様子。普段からとても明るい人なのですが、不必要なくらい饒舌に話かけてきます。
「俺、マジでドキドキしてきちゃった~。アソコ起っちゃたらごめんな~(笑)」
「頼むからそこで止めといてくださいね~」
・・・そんな馬鹿な会話をした記憶があります・・・。
まあ、その人には彼女がちゃんといるし、僕もべつに同性として好きという感情は持っていなかったので(=タイプじゃないということ。)そういう意味では大丈夫でした。
しかし・・・僕にとってはファーストキス。
「こいつに奪われるのかよ~」と内心では思いつつ、演出家に嘘をついてしまったため、未経験であることがバレないかと、そのことばかりに気をとられていました。

僕の役が車に轢かれる場面まで稽古は進み・・・いよいよ抱きかかえられてキスをする場面に。
ん?ちょっと待てよ。
考えてみたら、僕は車に轢かれて死ぬ直前なわけだから、瀕死の状態。
ただ脱力してればいいんじゃないか。
相手が勝手に抱き起こして、キスをしてくれるわけだ。
要するに僕はなにもする必要がない。相手にただ任せておけばいいのだ・・・その時になってはじめて気付く僕。変な下準備なんて、なにも必要なかったわけです(笑)。
ホッとしました。

さあ、いよいよです。
「大丈夫かあー!?」と車にはね飛ばされた僕を抱きかかる先輩。
「ダメ・・・かも」と死期を悟った僕(展開早っ!・・・笑)。
「しっかりしろ!お前がいなくなったら俺はどうすりゃいいんだよ!」
ますます強く抱かれ、僕の役はついこんな事を口走ります。
「・・・僕・・・シアワセ。」
そして、「目を閉じるなっ!!」と言って先輩がいきなり口づけしてくる設定なのです。
僕は覚悟を決めました。内心では「うわ~・・・っ!!」と叫びながら目をつぶって覚悟を決めたそのとき・・・

「はいっ!!」

と、いきなり演出家が手を叩いて稽古を止めました。

「ちょっとまって。・・・休憩。」

・・・僕はフェイントを食らい、唖然呆然。先輩は・・・汗ダラダラ(笑)。
二人で「おいおい頼むよ~」とか言いながら、仕方がないので休憩に。
演出家を見ると、なにやら台本に書き込み始めています。
えっ、また変えるの・・・?

<続>

・・・しかし、よくもまあこんな筋の物語を一生懸命やったもんだと
当時の若さに感動するとともに、若さの怖さについても考えてしまいます・・・。

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大学時代、ゲイを演じることになり・・・07

どうしてキスをする必要があるのかというと・・・物語を説明しなければなりません。

僕が演じるのは、平凡な高校生。仲のよい男子と女子の3人組でいつも行動を共にしています。
ある日、男子から恋愛の相談を受けます。その女子に告白したいんだけど手伝ってくれというのです。快く協力することを約束はするのですが・・・その時に気がついてしまうんですね、男子のことが好きだということを。
僕は本心を隠しながら見事に二人の恋のキューピッドを勤め上げるのですが・・・二人が仲良くすればするほど、自分が辛くなって行きます。だんだん元気をなくし生気を失う僕(の役)。高校も休みがちになってしまいます。もう以前のような仲良し3人組ではいられなくなってしまいました。
すると、今度はその男子が、胸騒ぎをはじめます。女子とうまく付き合えるようになったのに、なぜか楽しくなく、気持ちが冷めて行くというのです。僕との関係がおかしくなった途端、男子は気がつきはじめるのです。僕のことも実は気になって仕方がない・・・むしろ好きだということを。
ある日その男子は、学校を休んでいる僕の家に見舞いにやってきます。僕は、男子と女子がその後もうまくやっているかどうかを聞きます。男子は見栄を張り、うまく行っていると嘘をつき「お前も早く彼女つくれよ、俺が見つけてやるからさ~」と言い、帰って行きます。帰りながら嘘を後悔するのですが。
僕は男子が嘘をついているとは知らないので、自分の思いの行き場を失くして、さまよいます。
そしてある日。
フラフラになりながらも登校する途中、男子と女子が並んで歩いているのを見かけます。
男子が僕に気づき「ひさしぶりだな~、こっち来いよ~」と道の反対側から呼んでいます。
言われるがまま、ヤケっぱちになりながらフラフラと道を渡ろうとするのですが・・・そこへちょうどトラックがっ!!
はねられた僕はそこで死ぬことになるのです(笑・・・少女マンガみたい。)

「大丈夫かっ!」と駆け寄る男子。僕を抱きかかえます。
「駄目だと思う・・・」と死を悟った僕。
そして、愛される者に抱かれながら綺麗に死ぬはずだったのですが・・・
ここを、キスシーンに作り変えやがったんです、あの演出家がっ!
(しっかし、ベタベタな物語だな~・・・笑)。

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大学時代、ゲイを演じることになり・・・06

キ・・・キスシーン・・・。
僕は心の中で青ざめてしまいました。なぜなら・・・それまでまったく経験がなかったからです。

高校時代に付き合っていた女の子とも、手をつなぐのがやっと。しかも相手がつないできた時限定。
僕としては、ただそれだけのことでもかなり無理して演じてやっていたために、それ以上発展のしようがなかったのですが・・・。だから19歳になる当時まで、キスというものは僕にとっては、まったくもって想像の世界のものでした。
はじめての経験をする前というのは誰でもそうだと思いますが、必要以上に妄想が膨らみ、神聖視しがちです。特にキスというものは「ファースト・キス」という言葉もある位ですから・・・とても大事なものだと思っていました。だからその時の動揺といったら、それはもう(笑)。しかしその動揺を悟られると恥ずかしいので、オモテ向きは「キス?・・・あ、そう。ふーん。」という感じで平静を繕っていました。
しかしそのことを敏感に察知したのか、演出家がいきなり皆の前で
「キスしたこと、あるよね。」
と、無表情で聞いてきやがった。
「当たり前じゃないっすか~。いくつだと思ってるんですかぁ~」
と、かろうじて平静に返事をしたものの・・・心臓はバクバク(笑)。
「なんだ。せっかくだからデビューさせてあげようと思ったのに。じゃ、明日までに台詞入れてきて。」
あくまでもクールに稽古場を取り仕切って、彼女は帰って行きました。
まったく・・どこまで人を翻弄すれば気が済むんだか。

そう答えてしまった以上、僕は「キスぐらいフツーにしたことのあるフツーの健全な男子」であらねばならなくなってしまいました。ああ・・・。
はじめてのキスくらいはやっぱり、好きな人としたいじゃないですか。
ちゃんと自分が納得した形でしたいじゃないですか。
でも、若さゆえの真面目さで演劇に燃えていた僕としては「役者たるもの、キスの一つや二つ、演じるためだったらするのが当たり前っ!」と、自分を無理やり納得させました。

しかし・・・いよいよ翌日からは、実際にそのシーンの立ち稽古が始まってしまうのです。
ど・・・どうしよう。どの程度まで口をつけるのがキスというものなのかなぁ・・・。舌を絡ませなきゃ、慣れてない人と思われちゃうのかなぁ・・・。未経験だと悟られてしまうのではないかと不安が募ります。
そんな不安をなんとか克服すべく、さっそくキスシーンが含まれていそうな恋愛映画のビデオをレンタルして、その日の僕は徹夜で「キス」を研究したのでした・・・。

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