大学時代、ゲイを演じることになり・・・05

かなり繊細なところのある人で、よく体調を崩していました。電車に乗ると突然恐怖症のような発作を起こし、途中の駅で降りてしまうこともありました。付き合う男性がコロコロと変わるけれど、常に誰かと付き合わなくてはいられないみたいでした。彼との前夜のSEXについて突然語り出したり、「私、生理が活発なの」と平気で僕に言って、不機嫌なことの言い訳にしたり・・・僕には刺激が強すぎて面喰ったけれど、彼女はそんな僕の反応を楽しんでいるみたいでした。
でも、いざ演技を始めるとそれはもうピカイチで、ものすごく自然に台詞を喋り、動ける人なのです。役者経験2回目で彼女の相手役をやらせてもらった時は、すごく楽に演じられたのを憶えています。上手い人と組むと、自分も自然にリラックスが出来るみたいです。相手のペースに委ねてリアクションを自然にすればいいから。その舞台ではじめて、僕は演じていて「楽しい」という感覚を味わったように思います。日常ではどう絡んでいいのか戸惑い続けましたが、舞台の上では最高に絡みやすい人でした。
そんな彼女の「演出」を受けるのは始めて。しかも彼女が書いた脚本。
僕に当てて役を描いてくれたことは嬉しかったけれど、その役が「男を好きになる役」であるということは、不思議とあまり気にしませんでした。それはきっと、まだ深く自分のことを考えていなかったからだと思います。「なんとなく」意識はしてるけど、まだ向き合っていない状態。考える暇を作らないよう、忙しさでごまかしていた・・とも言えるのかもしれませんが。
稽古がはじまり、台詞はすぐに入りました。あまり苦労せず、順調に場面が出来て行きます。
そんな或る日、彼女が突然、稽古を3日間休みにしました。
休み明け。
彼女は台本を書き足して持って来ました。作り替えたい場面があるというのです。
変更された部分を読んだ途端、僕はア然としてしまいました。
そこに書かれたト書きには・・・
キスシーンが足されていたのです。
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大学時代、ゲイを演じることになり・・・04

キャストが発表される日というのは、朝からとても緊張します。なにしろ、その日から本番が終わるまでの50日間、自分がどんな人間の内面を理解し身体を使って演じるのか・・その役割が宣告されるわけですから。
演出家は女性の先輩。とても繊細で鋭い感性を持った人でした。一応どの役をやりたいのか希望は聞いてくれるのですが、他の役との組み合わせや出番の都合などによって、必ず希望が叶うわけではありません。僕はそれまで「やりたくない役」をやってばかりだったので、なおさら「今度こそは」と緊張していました。
演目は、その女性演出家が自分で書いたオリジナル脚本。天使と悪魔が狂言回しのように登場する中、人間たちが「死」をどう迎えるのかをオムニバス形式で描くというものでした。
僕には、本読みの段階から不思議と魅かれる役がありました。その役だけ、なぜか余計な事を考えなくてもスッと読めてしまうのです、しかもとても自然に。
そんなことははじめてだったから、ぜひその役がやりたかった。でも主役級の役なので、へたくそな僕では役不足かもしれないと思いつつ、演出家との面接で、僕にしてはめずらしくそのことを主張しました。その時、演出家はなぜか僕を凝視するだけでした。普段から突然そういうことのある人だったので、その時はあまり気にはしなかったのですが。
そして、キャスト発表・・・。
その役は僕に回って来ました。
僕に割り振られた役は男子高校生。男2人、女1人の仲良し3人組でいつも行動している普通の高校生。ただちょっと変わっているとすれば、三角関係であるということ。しかも女の子を巡ってではなく、男子をめぐっての三角関係が、微妙なニュアンスで描かれているものでした。
演出家がこっそりと僕に近づいてきて言いました。
「この役は、キミがやるということを想定して、当て書きしたものだから。」
「えっ・・・」
「じゃあ。」
それだけ言って、彼女は帰って行きました。
次の日から、稽古が始まりました。
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大学時代、ゲイを演じることになり・・・03

同じ履修クラスの女の子。素朴で、でも負けず嫌いで、自転車に乗るのが好きなさわやかな子でした。
僕は、その子に対して明らかに好意を持っていました。その子も、たぶんそうだったと思います。二人で話しているとすごくいい雰囲気で自然でいられたし、人間的に大好きでした。勉強の面で関心を持つ分野も似ていて、ゼミも一緒になって嬉しかったのを覚えています。演劇も毎回欠かさず花束を持って見に来てくれて、アンケートもびっしりと、真面目に感想を書いてくれるような子でした。
でも、二人の関係をどうこうしようとかいう風に、僕は行動しませんでした。怖くて逃げていたのかもしれません。今思うと。
高校時代のイタイ経験から恋愛に関しては恐怖症のようになっていたし、その子に対して性的に魅かれていたのかというと、違うとは思います。生々しい書き方ですが、その子の裸を思い浮かべたり、その子とSEXをしたいなんて考えたことさえなかったと思います。
でも、好きだった。結婚したいと思うくらい、ずっと一緒にいたいと本心では思っていました。
卒業後に地元に帰ったその子から、結婚したという葉書をもらった時は・・・ものすごく大きなものを取り逃してしまったような空虚感に打ちのめされ、一人で泣きました。
やっぱり、好きだったんだと思います。
性的にではなく人間として、女の子を好きにもなれるんです、僕。なったことがあったんです。
いや・・・もしかしてその子にだったら、積極的に迫られたとしても拒否反応は出なかったんじゃないかとさえ、今更ながらに思います。「女っぽくない子」だったから。「女である」という部分を強調して男に媚びる姿勢をまったく見せない、芯の強さを感じさせる子だったから・・・。
そう考えると、今自分が認識している「ゲイである」というアイデンティティーってなんなんだろうと・・・書きながら考えています。
ここ何年か、忘れていたことでした。忘れようとしていたんでしょうね、きっと。
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大学時代、ゲイを演じることになり・・・02

若かったんですね~、エネルギーに満ち溢れてました。あ、もちろん授業にはちゃんと出てましたよ。たまに寝てたけど。
そんな毎日だから、誰かと付き合っている暇なんかはありません。演劇部の内部でそういうことはしょっちゅう起こっていましたが、僕には関係がないことでした。そんなことより公演を成功させることの方が大事。少しでも客が入るようにと暇さえあれば立看板を作り、ポスターを貼って・・・公演前には「キャンパスの中で演劇部のポスターが目に入らない廊下はない」と言われるほどエスカレートしてました。
役者として演出家に振られる役はというと、僕の見た目からか、わりと正統派の男の役が多く、最初の頃は緊張のあまり何をしているのかわからないことばかりだったのですが、なんとか自分なりに男として役を演じようとはしていました。でも、なぜかどの役をやっても気持ち悪いんです。無理に作っている感じがするんです。
もちろん役というのは、架空の世界で自分以外の人物を演じることですから「役作り」は必要です。しかし役にリアリティーをもたせるには、自分自身というものが投影されなければならないのです。そうでないと役をこなしていることにはならないのです。実際に舞台の上で感情を表出させるためには「僕の身体と心」を使うわけですから、それは当たり前のことです。
頭ではそのことは理解できるのですが、なかなか結果として表現されません。かなり落ち込んだ日々が続きました。
そして一年が過ぎ、2年生の6月。
「役作り」というものに悩んでいた僕に、ある革命をもたらす役が廻ってきました。
初夏の公演で演出家に指名された役が・・・男を好きになる役だったのです。
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大学時代、ゲイを演じることになり・・・01

どうせ大学に入ったなら、やはりサークル活動をおもいっきり楽しみたかった僕は、いくつかのサークルの説明会に顔を出しました。そして「新入生歓迎公演」をやっていた演劇部を見に行きました。公演はわけもなく楽しげであり、シャイなくせに実は目立ちたがりな自分にはピッタリなのではないかと思い、軽い気持ちで入ってみました。
ところがこれがかなり本格的なもので、「サークル」というより「部活」という感じ。同じ敷地内にある短大との合同なので圧倒的に女の子が多く、しかもこのご時世に大学に入ってまで本格的に「何か」に青春を賭けてみたいと燃えてしまう人は少数派であり、かなり熱烈な大歓迎を受けてしまいます。
「あえいうえおあお」「かけきくけこかこ」・・・などの滑舌の練習から、基礎体力作りのためのマラソンまで、まるで体育会のようなノリに翻弄されながらも、実はそういう青春チックなことに燃えなければ青春ではないっ!と思っていた僕としては嬉々として、この部活にハマって行くのでした。
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高校時代、女の子と付き合ってみたものの・・・完結

あとで聞いたことですが・・・彼女は僕に見えないところで泣いていたそうです。彼女は何も悪いことをしていないのに僕は泣かせてしまったのです。
それは夏休み中の出来事だったので、二学期が始まるまでは彼女と顔を合わせる機会はありませんでした。ぱったりと電話もかかって来なくなりました。
僕は内心、その自然消滅という状態を喜びました。
そして生徒会も引退の時期となり、彼女と会う機会自体がなくなりました。受験のシーズンになったのです。
結果的には彼女の方から身を引いてくれました。
僕の方から状況を変えるためのアクションは、何一つしませんでした。
なんてずるい奴・・・。
今でも、このことを想いだすと、自分の情けなさ、残酷さに腹が立ちます。そして、彼女の気持ちを思うと胸が苦しくなります。
卒業式に、彼女はとびきりの笑顔で送り出してくれました。何事もなかったかのように、一人の後輩として。
そして手紙をくれました。
「付き合ってくれてありがとう。今思えば、彼女の方がずっと大人だったんですね。
私はすごく楽しかったよ。
いろいろ気を使わせちゃってごめんね。
今私は、野球部の子と付き合ってるよ。
もう心配しないでね、大丈夫だから。」
<終>飛び飛びの掲載でしたが、読んでくださりありがとうございました。
まだ自分のセクシャリティーを認めていなかった頃の情けなさを、自分でちゃんと受けとめておくために書きました。ほんっと情けないっすね~(笑)。
その後大学に入ってからは演劇に熱中するのですが・・・。
次はその演劇部で、ゲイの役を演じることになった時に感じた奇妙な感覚について書いてみようと思っています。
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高校時代、女の子と付き合ってみたものの・・・09

食べ物が喉を通らないのです。親の前では心配させると悪いので食べるふりをするのですが、裏で吐いてしまっていました。高校生なので母親が弁当を作ってくれていたのですが、それも申し訳ないことに食べず。ただでさえ痩せ気味の身体がさらに細くなってしまいました。そして・・・倒れてしまったのです。
生徒会の仲間で近くの海岸の花火大会に出かける途中、大混雑の電車の中で貧血を起こしました。大汗をかいて意識を失い・・・気がついたら電車から降ろされ、大勢の知らない人たちに取り囲まれていました。しばらく駅で寝かせてもらった後、なんとか仲間とは合流。そこで彼女が本気で心配して「彼女らしく」肩を貸してくれたり介抱のようなことをしてくれるのです。ところが僕としては気分が悪いのでいつものように演じる心の余裕がなく、あからさまに拒絶反応を示してしまいました。皆が見ているというのに・・・。
周りの皆も驚いたと思う。その頃は公然と「付き合っている」と言う目で僕たちの事を見ていたはずだから。
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高校時代、女の子と付き合ってみたものの・・・08

僕を狙っている同級生の子はその異変に敏感に反応し、なんだか前よりも接近が積極的になってきました(だからやめてくれって!)。
家に帰れば母親は案の定、やっと僕に彼女が出来たと勘違いして喜んでいる様子・・・。彼女から電話が来ない日はニヤニヤしながら「アレ?○○ちゃん、今日はどうしたんだろうねぇ」と話しかけてくる。「○○ちゃんは学校でもあんなに明るいの?」とか「どこに住んでるの?」とか、「また呼んでもいいのよ~」とか。
・・・あ~ウザったいッ!。思えば僕が「女嫌い」なのって、この人のこういう粘着質な性質と親しみすぎたせいなのかもなぁ(←これ、けっこう当たってるんじゃないかと思います、母親には失礼だけど。)と、変な分析をしながらも結論を先延ばしにしたままの虚ろな日々は続いたのでありました。
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高校時代、女の子と付き合ってみたものの・・・07

急病を装って一週間は休んだかな?(←おいっ!)。
彼女(後輩)が電話をくれても居留守を使ったので余計に心配をさせ、ついには家まで彼女がやってきました。
さすがに家族を丸め込むことは出来ていなかったので、親切にも母親は彼女を部屋に通しました。困った僕は・・・なんとか重病患者を演じきりました(←サイテー!)。
部屋に入ってきた彼女は・・・かいがいしく水枕を代えてくれたり、お粥を作ってくれたり・・・すごく、彼女っぽいことをしてくれるんです、母親と一緒に喜々として。
「やめてくれ~っ!」という心の叫びも空しく、僕はますます生理的に彼女を嫌いになってしまうのでした。(ヒドイ話だ・・・)。
☆硬軟織り交ぜた当ブログ・・・この話はまだまだ続きます~。→FC2 同性愛Blog Ranking
高校時代、女の子と付き合ってみたものの・・・06

やがては同じ生徒会をやってる仲間同士なのに、女同士二人は口も利かなくなります。周りの仲間には「モテるね~」なんて冷やかされるのですが・・・普通は嬉しい状況なんだろうけど嬉しくありません。そういう「ナマの女」の部分を感じるとますますダメなんです。はっきりいって「暑苦しい」んです。(ちょっと失礼な表現ですね、スミマセン。でも実際、そんな感覚なんですよ・・・)。
自分の内面とも向き合えない小心者だった僕としてはもう、どうしていいんだかわからなくなりました。
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高校時代、女の子と付き合ってみたものの・・・05

お互いにとってこれは・・・地獄でした。
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