ヤウ・チン「LET'S LOVE香港」●MOVIEレビュー

映画が芸術表現なのだとしたら、「わかる」のではなく「感じれば」いいのではないかとよく思う。音楽や絵に触れた時、それをわかりやすい言葉で解釈など出来るだろうか。そもそも人生や世の中って、ハリウッド娯楽大作映画のように「わかりやすく」語ってしまえるほどに単純なものなのだろうか。
香港ではじめてレズビアンであることを公表した映画監督ヤウ・チン(Yau Ching)による「LET’S LOVE香港」は「わかりやすい言葉」による解釈を拒否し、「わかりやすい物語」で安易にこの世の中を語りきってしまおうとする傲慢を疑う感性を持った、真に謙虚な芸術家による表現だ。彼女は格闘している。21世紀の香港という街と、そこに生きる人々の真実を映像表現として定着させようと格闘している。
空の見えない大都会。足早に淡々と通り過ぎる人々。根源的な孤独を抱え、心に何重もの武装を施しながらも、そのことを悟られないようにと強がりながら生きている「今を生きる我々の姿」が、たくさん映りこんでいる。
この映画の真の主役は主役の3人だけではない。3人の日常風景を描くことで、大都会に暮らす人々に特有の「ある空気感」が丁寧に描写されていることに注目したい。映画全体から漂ってくる、なんともいえない倦怠感。ポッカリと空いた心の空洞を「わかりやすい物語」で焦って埋めてしまうことの更なる空虚。ネットで脳内娯楽に没頭したり、リアルなセックスに身を任せてみても…なぜだろう。「欠乏感」から逃れることが出来ないのは。
「満たされること」を求めているんだかいないんだか。「現状に満足」しているんだかいないんだか。そもそも「満足」とは何なのか。なぜに人は人を求めざるを得ないのか。いや、本当に「求めざるを得ない」のか?。常に移ろい行く捉えどころのない心。捉えどころのない存在。

見終わった後に心に棲みつき、いつまでも反復し続ける「終わらない映画」だと思う。
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コメント
この記事へのコメント
たしかに映画は、感じられたらそれでいいと思います。
批評家は理論だてて何がどうのとぶった切るけど、一人の人間の意見に過ぎません。流されずに、色眼鏡なしに感じられることが大切だと思います。
批評家は理論だてて何がどうのとぶった切るけど、一人の人間の意見に過ぎません。流されずに、色眼鏡なしに感じられることが大切だと思います。
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