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フツーに生きてるGAYの日常

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2023-09
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王の男ブームを追う004●同性愛を描きながら「異端視」されない理由

当初、「同性愛」に言及しなかった(らしい)
韓国メディア


 かたや「ブロークバック・マウンテン」は「同性愛描写」が問題視され、中国やUAEなどのように上映禁止を決める国もあればアメリカ国内でも上映中止運動が起き、アカデミー作品賞を逃した理由に挙げられたりしているのに、なぜ韓国で「王の男」は国民的な爆発的ヒットを記録しているのでしょう。

 このことに関して、昨日の記事を見てくださった方から、とても興味深いサイトを紹介していただきました。
 韓国のゲイ小説家ハン・ジュンヨルさんの「王の男」に関するレビューです。
 これは2006年1月に韓国の「戦う新聞」として有名な「ハンギョレ21」に掲載されたものを日本語訳したものです。韓国のゲイとして「王の男」ブームへの戸惑いが率直に綴られており、映画の内容を推測する上でも面白い文章です。ぜひ読んでみてください。
ハンギョレ21 594号「過度に美しいゲイロマンス」

<彼のレビューを要約します。
映画「王の男」のネタばれ的な要素も含みますので、ご注意ください。↓>


 映画「王の男」は韓国映画の興行成績を塗り替え、多くのメディアがその要因を分析しているにも関わらず「同性愛」に言及するメディアがほとんどないのは異常だ。なぜ「王の男」は、従来の同性愛描写映画に貼られがちだった「Queer(風変わりな)映画」というレッテルを、観客や批評家から貼られずに済んでいるのか。

①「過度に美しいため」ではないか。
・・・主人公コンギルの「しとやか」な描写など、映画の中の男たちの愛が美しく見えるように描かれている。

②「少しでもホモフォビアたちの神経に触る性的表現をすべて排除したから」ではないか。
・・・恋人たちは「熱い視線だけ」を交換する。セックス描写を避けたのは利口な演出だ。ホモフォビアは「同性愛」というとすぐに「肛門性交」を連想して身震いするから。

③男たちの愛を「互いに対する終わりのない配慮と犠牲」として描いているからではないか。
・・・ホモフォビアたちが彼らの愛を「汚い」と悪口を言う根拠が一つもない。
  ↓
 過度に美しい同性愛という理由で, どちらかといえばこの映画は大多数の観客からは同性愛映画とは見なされないようだ。 彼らが知っている同性愛とは、このように美しくはありえないのだ。 あたかも、この映画を同性愛映画だとされた瞬間, 映画の価値が一瞬にして下落でもするかの様に。

 同性愛から同性を離れて愛だけを描写したこの映画は、誰かの話のように一編のよく作られた‘ボーイロマンス’なのかもしれない。
  ↓
 エロチックなセックス描写がなく、慇懃な目くばせだけでもあらゆる事を表現できるゲイロマンスも存在するのだ。同性愛者も、異性愛者と同じように映画を通して夢を見る権利がある。このような「美しい愛」を夢みるQueerたちのためのロマンス映画がたくさん登場することを願う。

 「同性愛コード」の歴史

 ハン・ジュンヨルさんは「王の男」の大ヒットと国民映画的な地位の獲得は、「同性愛コード」を戦略的に「隠した」からだと捉えているようです。これは、今までの同性愛映画史から言っても珍しいことではありません。

 ドキュメンタリー映画「セルロイド・クローゼット」でも詳しく描かれたように、ハリウッドにも数多くいるLGBTの表現者・芸術家たちは、ホモフォビアたちから「変態映画」のレッテルを貼られて上映禁止になることを恐れ、さまざまな工夫を凝らして同性愛表現を隠し、巧妙に映画の中に忍ばせて来ました。
 時には設定を改変させられたり、企画そのものが中止になることもあったようです。
 なぜならハリウッドにおいては60年代まで「同性愛」をスクリーンに映し出すことが自主規制機関のチェックにより禁止されていたからです。
 1969年にアカデミー作品賞を受賞した
「真夜中のカーボーイ」 が同性愛映画というレッテルを「公式には」貼られずに「名作」としての地位を確立したのも、製作者たちによって巧妙な工夫が施されたからだと思います。
(→「真夜中のカーボーイ」を最近見直し、そのことを確信しました。この映画に隠された「同性愛コード」分析を近々、掲載します。)

 現在の韓国は「男性のみが徴兵される」兵役制度が依然敷かれており、「男が男らしくあること」を国として奨励している社会です。
(→ 「ウォンビン兵役報道に思う」参照)
 そのような社会では男同士が愛し合うことは「非生産的」なことだと見做され、軽蔑や嘲りの対象になりがちです。
 しかし「王の男」は、近代以前ではありますが旅芸人と宮廷の王が「愛しあう」姿を歴史劇として堂々と描き出しています。それにも関わらず「同性愛コード」はさほど問題にされず、大統領までもが「この映画を見た」ことを大々的に喧伝し、ブームに便乗しているのです。

 最後は「女」のもとへ戻る王

 製作者たちがどこまで意識的に行なったのかはわかりませんが、「王の男」が結果的に大ヒットして「国民映画」の地位を確立した秘訣はやはり、「同性愛コード」が忌避感を持たれない程度に、万人に受け入れられやすく「美しさ」で薄められたからでしょう。

 また、コンギルという「美しい男」に惹かれた王は、物語の最後には結局「女」の元へと戻るという筋書きも、少なからず影響しているのかもしれません。いや、かなり影響しているのでしょう。

 しかし、やはりこの映画がヒットしたのは、現在の韓国社会の人々の意識下で予測もつかない「何か」が動き始めていることを意味しているように感じられます。実際に「同性愛コードの分析」などもメディアによって始められているようです。今後ますますそうした機会は増えることでしょう。

 男性同士の性行為場面を、物語上の必然として堂々と描いた同性愛映画「ブロークバック・マウンテン」や、ゲイと女性が性行為に挑む場面を含んだ日本映画「メゾン・ド・ヒミコ」も公開されていることですし、なにかと物議を醸し続けることでしょう。韓国のLGBTたちにとって今年は、更なる「社会の中での可視化」に繋げるための絶好の機会なのかも。FC2 同性愛Blog Ranking
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コメント

この記事へのコメント

Queer

む、はからずもわがブログタイトルに使われている単語が…。
ある意味akaboshiさんのブログコンセプトとは正反対の
ようですが、私のqueerはちょっと「風変わり」程度です。
よく「いっちゃってる」と言われることもあるので。
なんとなくだけど、「やおい映画」的なものを感じましたね。
歴史劇としてはおもしろそうですが。

ハンギョレ21は朝鮮日報と反対^^極左新聞です... お互いに相反した論調を持っています...
朝鮮日報,中央,東亜日報 VS ハンギョレ21,OMY

朝鮮日報が同性愛について良い記事を書いてくれたら,
王の男, 超GOOD!! です^_^よほど GAYを好きではない人々なのに.たまに善良な仕事もするようです...21を含んで 王の男に肯定的に評価してくれることを見れば...

心配がたくさんなります...昔の韓国語(ハングル使い), なまり... 日本語字幕で ... 意味伝達が難しくないでしょうか...感性を信じるしかないですね... 私の立場ではよほど心配になります...


●kazuccineさん。

リンク先のハンギョレ21の記事に書いてあったけど
「Queer」って、自らがあえて名乗って使う分には肯定的ニュアンスになるけれど
アカの他人が使うときには「蔑称」としてのニュアンスが含まれることが多いみたいだね。

●翼 (날애) さん。

ハンギョレ21は、日本でいうと「週間金曜日」とか「赤旗」みたいなものなんですね。
極端な主張をする人たちは、ある意味同質なものを持っていると僕は感じます。
戦闘的な体制を取らずに対話できるといいんですけどね。

言葉、ちゃんと伝わってますよ。
細かいところは気にしなくても、気もちで大事な部分はちゃんと伝わってます。

韓国映画の本、出版にこぎ着けました!

ご無沙汰しています。MYPのG2です。最近、戦争体験継承ブログも立ち上げました。一度見てみてくださね。
それで以前お話した「映画を通して韓国の歴史を知る」本、ついに出版にこぎ着けました! 10月末に出ます。タイトルは「歴史を知ればもっと面白い韓国映画」です。売れるといいなぁ。

●G2さん。

お久しぶりです。
「歴史を知ればもっと面白い韓国映画」おもしろそうですね。絶対に買います!
ぜひぜひ、発売の際には詳しい情報を。

同性愛コードの問題にならなさ

同性愛である必然性が感じられないからじゃあないかなあ?
相手の性別を巡る苦悩というのはほとんど描かれないわけで。

●玉野真路さん。

同じように、同性愛である必然性がなく
相手の性別を巡る苦悩というがほとんど描かれない映画に
「僕の恋、彼の秘密」がありますね。
http://akaboshi07.blog44.fc2.com/blog-entry-214.html

やっと、同性を愛することが「特別なこと」として描かれなくなってきたのは
いい傾向だと思ってます。
「王の男」はまだ見ていないのですが、宣伝方法にはやはり「ムカついて」ますので
そのうち書くと思います。
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